12月19日に天皇杯JFA第101回全日本サッカー選手権大会の決勝が行われる。準決勝でPK戦の末に川崎フロンターレを撃破した大分トリニータは、初めての決勝進出だ。長く大分でプレーする松本怜にとっては万感の思いが湧き上がる。もちろん勝つために最大限の集中力をぶつける。

上写真=大分で9年プレーする松本怜は、万感の思いで天皇杯を取りにいく(写真◎J.LEAGUE)

「死ぬ気で戦えば勝てると思う」

「夢みたいな感じです」

 松本怜は素直に天皇杯決勝進出の思いを表現した。準決勝でJ1チャンピオンの川崎フロンターレと戦って、粘り腰の戦いで0-0で試合を進め、延長戦も残り少ない113分に先制を許しながら、120+1分にエンリケ・トレヴィザンが決めて追いつき、PK戦の末に突破したのだ。

 松本はベンチからのスタートで、71分にピッチに入ると、川崎F対策として採用したダイヤモンド型の中盤で左サイドに入った。そこから50分強、戦い抜いた。先攻で入ったPK戦では、2人目がともに失敗したあとの3人目とプレッシャーのかかる場面で、「チョン・ソンリョンが大きく見えた」と驚きながらも、きれいに左上隅に蹴り込んだ。

 大分でプレーして9年目。J3に降格してもチームに残り、そこからJ2、J1と駆け上がるチームを力強く牽引してきた。今季はJ1で18位に終わってJ2降格が決まったものの、天皇杯というビッグタイトルで日本一になるまであと1勝という場所までたどり着いた。「なんとか県民の皆さん、ファン・サポータの皆さんに元気を与えたいと思っていました」という思いが、道しるべになった。

 決勝の会場は新しくなった国立競技場だ。早稲田大時代に以前の国立競技場でプレー経験があり、2007年度のインカレでは決勝で先制ゴールをアシストするなどの活躍で優勝している。

「これまで何度か昔の国立でプレーしたことはありますけど、新しくなってからの国立でできるのは残りのサッカー人生を考えてもなかなかないかもしれません。一生に一度になるかもしれないので楽しみです」

 その相手は浦和レッズだ。今季のJ1ではアウェーで2-3で敗れたが、ホームでは1-0で勝っている。松本はアウェー戦で先発して3-4-3システムで中盤の右ワイドに入った。

「個々のレベルは川崎と同じぐらい高いと思っています。ただ、僕たちも一人ひとり、死ぬ気で戦えば勝てると思うので、優勝するつもりでいます」

 その川崎Fを1点のみに封じ込んで勝ち抜いた自信がみなぎる。勝利への道は、川崎F戦と同じ部分にポイントがあると見据えている。

「一瞬たりともスキを見せないことが重要です。もし見せたら、相手はそこを逃してくれませんからね。川崎戦も最後の最後まで体を張った結果なので、決勝でもスキを見せなければ勝機は見えてきます」

 勝負のときが近づく。2021年12月19日、14時キックオフの予定だ。