上写真=鬼木達監督は一発勝負でも「いいものを見せたい」と、いつもどおりに攻め抜くつもりだ(写真◎J.LEAGUE)
「自分たちに期待して」
連覇を果たしたJ1の全日程を終えて、川崎フロンターレはJリーグアウォーズでひとときの華やかなパーティーを楽しんだ。レアンドロ・ダミアンが最優秀選手賞、ベストイレブン、得点王で表彰され、ベストイレブンにはほかに、ジェジエウ、谷口彰悟、山根視来、家長昭博、脇坂泰斗、旗手怜央の6人も選出、鬼木達監督もJ1優勝監督賞を受賞し、高円宮杯フェアプレー賞をチームが、フェアプレー個人賞を山根が手にする栄誉にも浴した。
だが、まだ終わりではない。12月12日、大分トリニータとの天皇杯準決勝である。
大分はJ2降格が決まって、片野坂知宏監督の退任も発表されているから、ピッチの上に目に見えないパワーが介在してくる可能性がある。ただ、「一発勝負はいつも難しい」とする鬼木達監督が、相手の状況に惑わされることはない。
「そういう思いはあるだろうと思いますね。チームは生き物で、パワーが出るときも失うときもあります。相手のパワーが出るか出ないかはわからないけれど、最大限で出てくるという予測でやるのが自分の仕事ですし、いつも相手に期待することはなくて、自分たちに期待していくので」
先入観が邪魔になるのだ。相手の分析はするが、主導権を握るのは自分たち。そのスタイルがこのチームを強くしてきた。
「頭の中でシミュレーションはある程度はしますが、それ以外はできるだけしないですね。ゲームが始まったら、そこで何が起きているのかを見て、分析して、あとは実行するだけです。だから、頭の中での先入観はありません」
圧倒的な強さを誇る川崎Fに対して、向かってくる相手はさまざまな仕掛けを施してくる。特にトーナメント戦では顕著で、苦労させられてきた。天皇杯では2回戦でAC長野パルセイロにアディショナルタイムになんとか追いついて1-1からPK戦で勝ち抜き、3回戦のジェフユナイテッド千葉戦でも先制されながら追いついてPK戦で突破、ラウンド16の清水エスパルス戦では一度追いつかれながら突き放して2-1で逃げ切った。準々決勝では鹿島アントラーズに3-1で勝ったが、いずれもリーグ戦とは違う難しさに向き合ってきた。
敗退も突きつけられた。ルヴァンカップは2戦制だが、準々決勝で浦和レッズに第2戦のアディショナルタイムでアウェーゴールを奪われ、AFCチャンピオンズリーグのラウンド16でも、韓国の蔚山に0-0からPKで敗れている。失意の底で改めて得た気づきは、ここで生かす。
「一発勝負の難しさはいつのときも変わりません。どのタイミングでどれだけパワーを使えるか。PKだろうがなんだろうが勝ち進むのが大事なので、状況をしっかりと自分の立場から見極めて120分+PK戦までの頭を持ちながらも、ただ圧倒したい、いいものを見せたい、ワクワクを見せたいのは変わりません。だから、一発勝負に恐れないことが勝ち進むために必要です」
もう一つの連覇へ向けて。選手たちに強気を求める前に、鬼木監督自身が強気だ。