最後に自分を動かすのは気持ち
クラブと代表とフル稼働のシーズンで「きつい時期もあった」ものの、山根は見事に走り切ってみせた（写真◎J.LEAGUE）
――連戦や隔離、日本代表でのプレーなど、大変なシーズンだったと思います。
山根 正直、かなりキツかったです。ベストコンディションでプレーできた試合は、本当に開幕の1試合、2試合だったかなと思いますし、それ以外は体が動かなったり、足が苦しいと思う日も多かったですね。でも、代表に入ったことで見られ方も変わって普通のプレーを見せているようではダメ。その中でもいいプレーをし続けないといけないと考えるようになって、何とか自分を奮い立たせてやってきたと思います。
――そんな苦しい状況の中で、毎試合いいパフォーマンスを残すために考えていたことはありますか。
山根 なかなか伝わらないと思いますけど、やはり気持ちなんですよね。人間なので、最後に自分を動かすのは気持ち。一度、緩めてしまうと、なかなか気持ちは起きない。そことだけずっと戦っていました。
――周りに目を向けるのではなく自分自身と戦っていた、と。
山根 ふっとしちゃうとエンジンが掛からなくなってしまう。もう次、次だと、ダメだ切らすなと、1年間ずっとやっていました。かなり苦しかったですね。特に隔離があった期間は、一人で向き合う時間も長かったのでかなり難しかったです。
――今年、より成長できたところはどんなところですか。
山根 ちゃんと遠くを見られるようになったことですね。来る前に相手をしっかり見て、ゴールに直結するところから逆算して見られるようになってきたと思います。そこは鬼さん（鬼木達監督）にもできるようになってきたと言われるようになりました。
――J1第17節・鹿島アントラーズ戦のレアンドロ・ダミアン選手へのスルーパスは、中村憲剛氏を彷彿とさせました。
山根 あれはキレイに通りましたね（笑）。できるときって意識している時ではなく、意識していることがパッとイメージとして出て、やったら成功して、それが成功体験でできるようになるというのが僕のサイクルなんです。ずっと意識しているからできるようになるのではなく、無意識なときにパンとできるようになると自分のものにできるイメージですね。あれはそういうプレーでした。
――今シーズンを終え、自身の中で出来るようになったことと課題を整理しているところだと思います。来年に向けてどんなことをさらに、という思いがありますか。
山根 課題は本当に全部です。全部の精度を高めること。今年以上にチャンスに絡んでいきたいですし、でもそこだけに固執しないようにしないといけないとも思っています。難しいことを狙ってできる選手ではないことをちゃんと頭に刻んでおかないと、実力に伴っていない選択をしてしまう可能性がある。それはチームにとっては全然いいことではないですよね。チャレンジすること、シンプルに使うところ、あとは使われるところのバランス。自分の強みを最大限活かすための最適なバランスの精度をもっと高めたいと思っています。
取材・構成◎林遼平 写真◎J.LEAGUE
※サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、今季のベストイレブン受賞者にインタビューを実施している。
Profile◎やまね・みき／1993年12月22日生まれ、神奈川県横浜市出身。東京ヴェルディジュニアユースから、ウィザス高、桐蔭横浜大を経て2016年の湘南ベルマーレに入団。主に右CBとしてプレーし、タフでハードな守りと豊富な運動量で翌年から主軸を担う。2020年に川崎フロンターレに移籍すると、右サイドバックとしてJ1優勝と天皇杯の二冠に貢献。ベストイレブンにも初選出された。2021シーズンもJ1連覇を果たし、ベストイレブンも2年連続で受賞。日本代表にも初選出された。178㎝、72㎏