Jリーグは12月6日、年間表彰式の『2021Jリーグアウォーズ』を開催した。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、J1優勝監督賞を受賞した鬼木達監督にインタビューを行った。史上最多の4度目の受賞となった名将に、そのマネジメント術を聞いた。

上写真=鬼木達監督がJ1優勝監督賞を受賞。4度目の栄冠は史上最多の偉業だ(写真◎J.LEAGUE)

2021年Jリーグ優勝監督賞
鬼木 達(川崎フロンターレ)

 苦しい1年だった。鬼木達監督は2021年をそう振り返る。J1では2位横浜F・マリノスと勝ち点で13もの差をつけ、失点28はリーグ最少、得点31は横浜FMに1点及ばなかったが2番目に多かった。それでも、主力の田中碧と三笘薫が夏にヨーロッパに渡り、ルヴァンカップと、大きな目標に掲げていたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に連続で敗退し、過密日程に苦しむなど、紆余曲折のシーズンだった。

 それでも頂点に導くことができたのはどうしてなのか。鬼木達監督自身が「監督という人間」として突き進んできた日々を振り返る。

「もう1回、このチームに火をつけないと」

J1で最多の4度目の優勝を果たした。来年は3連覇とアジア王者を狙う(写真◎Getty Images)

――2021年も「J1優勝監督賞」を受賞されました。史上最多の4度目ということで、本当におめでとうございます。

鬼木 ありがとうございます。歴史を止めずに進み続けられたということが、クラブにとってとても大きな優勝だったと思います。今シーズンはレジェンドの中村憲剛が引退していない年だったので、そこでもし今年、クラブとしてタイトルが取れなかったら、いろいろなマイナスの要素が出てきてもおかしくないと思っていました。そこは選手各自が、責任感を持って戦ってくれましたね。夏に田中碧、三笘薫の移籍もあって苦しいシーズンでしたけど、全員が一体感を持ってやり続けてくれた、すごく意義のある優勝でした。

――2017年に監督に就任してから、タイトルを取れなかったシーズンはありません。

鬼木 タイトルが取れなかったら、とシーズン前には不安もありますけれど、ただ、シーズンが始まったらいつも言っているように目の前の1試合にどう勝つかに集中するだけなので、先のことはほとんど気にしないんです。1試合1試合、戦うだけ。そういう思いでやっています。それが結果に必ず結びついていると信じているので、これからも怖がらずにやっていくんだろうと思います。

――普段から取材していると、クラブにかかわるすべての人が「オニさん」の下に喜んで集って、持っている力を注いでいる空気を感じます。どんなマネジメントで実行しているのでしょうか。

鬼木 マネジメントというもの自体を意識していないんです。選手もそうですけど、自分自身もスタッフも、考え方としては、自分の力を発揮できることは自分でやりますし、自分以外が携わったほうが力を発揮すると思えば託します。マネジメントを意識しなくてもつながっていっている、というのはそういうことかもしれません。

 あとは常に目標である「勝つこと」にチーム全体がフォーカスされていること、そして、結局は選手が楽しんでいなければチームは躍動していかないよね、という意識が、チームの中で共有されていることでしょうか。そういうところが自分たちの強みというか、人に託すことの重要性だと思っています。