明治安田生命J1リーグは残り2試合。すでに連覇を決めている川崎フロンターレだが、リーグ戦後の天皇杯準決勝と決勝も見据えて足を止めない。山根視来は今季もリーグ戦36試合中35試合に出場し、そのうち34試合でフル出場、日本代表でもワールドカップ最終予選で活躍するなど大車輪の活躍だ。

上写真=山根視来の今季初ゴールは福岡戦で生まれたが、レアンドロ・ダミアンとのワンツーから。彼の来季契約を喜んだ(写真◎J.LEAGUE)

「あそこで打っても誰も何も言わないのに」

「みんな、良かったと思っていると思います」

 山根視来が選手の思いを代弁した。11月25日、レアンドロ・ダミアンが川崎フロンターレと来季の契約に合意したと発表された。攻撃的な右サイドバックとしては、ラストパスを届ける仲間の残留に、こんなに頼もしいことはないだろう。

 山根自身は今季、得点とアシストで合わせて「10」という数字を一つの目標に掲げた。すでに2得点10アシストで「12」としてクリア。「一つの目安なので、次は15、20と目標を上げていって、質の高い選手になりたい」と振り返る。

 そのうち4月14日の第19節アビスパ福岡戦で決めた今季初ゴールは、ペナルティーエリアに進入してレアンドロ・ダミアンとのワンツーから決めたものだ。彼へのアシストも5つあって、3月3日のセレッソ大阪戦でクロスから豪快なボレーシュートを導いたり、5月26日の湘南ベルマーレ戦で鮮やかなオーバーヘッドにつながるパスを届けたりと、印象的なゴールになるパスが多かった。こうして、山根のゴールとアシストのうち半分を、背番号9とともに生み出したわけだ。

 鬼木達監督はレアンドロ・ダミアンが信頼を集めている理由の一つに、継続性を挙げた。

「試合に出ているときには頑張るけれど、出ていないときにも頑張らなければ信頼は得られません。彼は常にやり続けてきました」

 山根ももちろん、絶大な信頼と尊敬と感謝を寄せる。例えば、こんなふうに。

「ダミアンがセレッソ戦で2点取ったあとに、マルシーニョのゴールがありました。得点ランクは僕たちも気にしているし、ダミアンもストライカーなので取りたい中で、ハットトリックも狙えるチャンスでした。でも、プレー自体はミスにはなったけど、(脇坂)泰斗に落としたんです。あそこで打っても誰も何も言わないのに、チームプレーを選んだ。実績があってゴールを決める選手がそういうプレーを選択できるのは本当に尊敬に値するし、素晴らしい選手と一緒にサッカーができているとあの瞬間に本当に思いましたね」

 11月20日の第36節、49分の3点目のシーンだ。左から登里享平がペナルティーエリアの中央へ送り届け、脇坂がスルーしてレアンドロ・ダミアンが足元に収めた。ただ、少しコントロールが狂って相手に取られそうになってこぼれてしまう。すかさず回収した勢いでそのまま打ってもよかったが、脇坂に落とすことを選択したのだ。これが相手に当たって転々としたところを、マルシーニョがダイレクトで流し込んだ、というわけだ。

 J1は今季ももう残り2試合。天皇杯を残すものの、リーグ戦としては次が今季最後のホームゲームになる。相手は、ガンバ大阪だ。

「質の高い選手が多くいて個人で点を取れる選手がいます。押し込んでハーフコートゲームにしたいし、そのためには起点を作らせなかったり、チャンスそのものを作らせないように、あるいは極限まで少なくすることが大事になると思います」

 20得点のレアンドロ・ダミアンは得点ランクで2位。1位の前田大然(横浜F・マリノス)とはたったの1ゴール差である。G大阪戦、横浜FM戦と、2試合あれば逆転は可能だ。トップに追いつき、追い越すゴールを、山根のパスで導きたい。