上写真=柿谷曜一朗は大久保嘉人と対戦できることを「幸せ」と語った(写真◎J.LEAGUE)
スターの中のスターやなって
現在、名古屋は4位。来季のACL出場権を手にするためには、勝ち点5差を付けられている神戸を残り2試合で逆転して3位以内に入るか、このまま4位をキープし、1位の川崎Fが天皇杯に優勝した場合に4位に与えられる出場権を手にするか、いずれかしか方法がない。
カップ戦も含め今季4度目の対戦となる古巣・C大阪との試合を前に、柿谷は冷静に現状を受け止めた上でコメントした。
「あと2試合勝たないと何も見えてこない。勝つだけ。そして自分たちが1年やってきた集大成。大森(征之スポーツダイレクター)さんも今年で終わりであったり、(ガブリエル・)シャビエルの(退団)報道が出たりと、今年のメンバーとは来年はできない。その中で、みんなで最後、笑顔で終われるような試合にできればいいと思います」
タイトなスケジュールを戦い抜き、ルヴァンカップでは優勝を果たした。しかし、クラブにとって最大の目標としていた今季のACLは、ベスト8で敗退(浦項に敗戦)。リベンジの機会を得ることが今の大きな目標だが、リーグ戦残り2試合に勝っても神戸がポイントを落とさないと届かない。天皇杯も川崎Fが優勝すると決まっているわけではない。名古屋からすれば、他力本願な状況。それでも柿谷は、過酷なシーズンを戦い抜いた仲間たちとともに、笑顔をシーズンを終わりたいと話した。
加えて明後日のC大阪戦には、気合が入る理由もある。古巣との対戦だからではない。今季限りの引退を発表した憧れの選手がいるからだ。
「(大久保)嘉人さんに関しては、引退会見でもそうですし、僕は…西澤(明訓)さんが言っていた通り『あれだけ愛された選手はいないんじゃないか』と。その通りやと思う。そう思わない人もいるかもしれないけど、僕はそう思う。本当に、極端な選手というところにすごく魅力を感じます。10代の頃から、ユースのときから大久保選手に憧れていました。当時はまだシャツも出したらアカン、ソックスも下げたらアカンのに、嘉人さんはずっとやっていた。ユースの選手はみんな真似していました。ほんと、ユースの選手にとっては悪影響でしかなかった選手なんですけど(笑)。それをカッコいいから(自分も)やりたいと思わせるような、スターの中のスターやなって人。僕の中では今でもそうです。
引退というのはまだウソやと思っているし、残り2試合で大活躍をして、全員が『引退するのは早い』となって、引退会見はウソでしたってもう1回、会見をしてもらえるように頑張ってもらいたい気持ちもまだあります。本当に僕は尊敬しているだけの、いや尊敬とは違うかな。何だろう、アニメの主人公。僕の中ではアニメの主人公というか。この人を超える人はいないと思います。だから追いかけよう、目指そうと思った人。その人と試合ができるのは毎回楽しみですし、あの人と試合をするたびにユニフォームは交換しているので、もう今は10枚以上持っているんですけど、明後日(27日)はそれを全部持っていって、ちゃんと全部にサインしてもらおうと思っています」
「ピッチで同じ空気を吸えるだけもうれしい」「ウォーミングアップも一緒にしたいくらい」。大久保の話題になると、思いがあふれた。同じピッチに立てる機会は、今回が最後になる。
「Jリーグを引っ張ってくれた人なので、その人が引退する中で、次はそれこそキヨ(清武弘嗣)もそうやし、僕たちと同い年くらいの選手、もちろんマル(丸橋祐介)もそうだし、これからセレッソを引っ張っていくことと、僕たちもこれからJリーグを引っ張っていかなければいけないので、嘉人さんが安心して引退できるように。レベルの高いプレーが見せられたらなと思います」
勝利を目指すのは当然だが、大久保の前でJリーグのこれからを示す立場にあると自覚し、柿谷はいつにも増して気合いを込める。
「嘉人さんのことを考えたら、また燃えるものがあります。最後の試合で一緒におれたこと、その場でその空気感を味わえることが僕は幸せやなと思います」
憧れの存在とプロとして戦う最後の舞台。柿谷は自分のすべてを表現するつもりでいる。