11月3日の明治安田生命J1リーグ第34節で川崎フロンターレが連覇を決めた。浦和レッズとの対戦は33分にジェジエウが先制しながら、89分に浦和の酒井宏樹のゴールで追いつかれ1-1のドロー。しかし、2位の横浜F・マリノスがガンバ大阪に敗れたため、チャンピオンの座を手に入れた。

上写真=川崎フロンターレ、ホームのサポーターの前で連覇達成!(写真◎小山真司)

■2021年11月3日 明治安田生命J1リーグ第34節(@等々力/観衆11,603人)
川崎F 1-1 浦和
得点者:(川)ジェジエウ
    (浦)酒井宏樹

「勝って決めたかったですけど」

 川崎フロンターレが連覇達成! だが、終了のホイッスルが鳴った瞬間は、落胆だった。33分にジェジエウが先制しながら、最終盤の89分に浦和レッズの酒井宏樹に押し込まれて同点に。1-1のまま試合を終えることになった。

 しばらくして、2位の横浜F・マリノスがガンバ大阪に敗れると優勝が決まり、そこでようやく笑顔満開となった。

 川崎Fにとってはこの日も「右」がポイントになった。家長昭博を中心にして山根視来、脇坂泰斗、さらには旗手怜央もからんで右サイドから時間と手数をていねいにかけてボールを走らせて攻めていく。その右の崩しから得たCKだった。

 33分、脇坂が蹴った右CKが手前でクリアされるが、こぼれ球が山根の下へ。シンプルにファーに送ったクロスにレアンドロ・ダミアンがジャンプ。そこからこぼれたところをすかさず蹴り込んだのはジェジエウだった。長身ブラジル人が2人がかりで奪った先制ゴール。最後の最後に浦和に守られる時間が続きながら、セットプレーで仕留めるのは、厳しい連戦にも戦い抜いてきた川崎Fを象徴するようなしたたかな一発だった。

 浦和も黙っていたわけではない。AFCチャンピオンズリーグ出場権の3位確保へ勝ち点3は絶対命題だった。前半は中央の小泉佳穂と江坂任、右サイドの酒井宏樹と関根貴大、左の山中亮輔と汰木康也とユニットごとでボールは動いたが、そこから先のパス回しを引っ掛けられてリズムを分断されていた。

 大きく風向きが変わったのは選手交代がきっかけだろう。58分に大久保智明と伊藤敦樹を投入すると、川崎Fのプレスに対抗するように2人の生きの良さで強度を高めて、押し込む時間を増やしていった。小泉のワンタッチパスから江坂がゴール前に進入した72分などチャンスを作りながら、1点を追った。

 そしてついに同点に追いつく。左サイド深くで川崎Fのスローインからのプレーに寄せていって伊藤が奪い、江坂に預けてリターンをもらうと迷わずシュート、GKチョン・ソンリョンが弾いたボールを拾った酒井が、最後は右足を思い切り伸ばしてぎりぎりで押し込んで同点に追いついた。

 試合はこのまま終了。浦和にとっては「勝たなければいけない試合だった」とリカルド・ロドリゲス監督が悔やんだものの、「今季1敗しかしていないチームに対して取った勝ち点1は意味のあるものだと思います。今季4回戦って最初は大敗しましたが(0-5)、ルヴァンカップ2試合と今日は引き分けで、彼らの力に少しは近づいたと思います」と確かな手応えも持ち帰った。

 連覇を達成した川崎Fの鬼木達監督は、これで自身4度目の優勝で、史上最多の記録を打ち立てる偉業となった。「勝って決めたかったですけど」と苦笑いで本音を漏らしたものの、「今日の結果のことはありますが、1年の積み重ねなので、ホームで大勢のサポーターの前で優勝できてうれしい」と素直に連覇を喜んだ。

 昨年の優勝からの進化には「我慢の使い分けは徐々にできてきている」点を挙げた。中村憲剛の引退、守田英正の移籍、選手とスタッフの新型コロナウイルスへの感染、超過密日程、田中碧と三笘薫の夏の移籍、ルヴァンカップと最大のターゲットだったAFCチャンピオンズリーグからの敗退、長い隔離生活、度重なるケガなど、挙げればきりがない苦しみを味わった1年を振り返るにはふさわしい、鬼木監督らしい心のこもった言葉だった。

現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司