上写真=橘田健人はすっかりアンカーとして威風堂々のプレーぶり。「うまくて強い」浦和にぶつかっていく(写真◎J.LEAGUE)
「こんなに出られると思っていなかった」
「川崎フロンターレ成長率ランキング」なるものがあったとしたら、間違いなく1位なのではないだろうか。ルーキーの橘田健人の成長ぶりが目覚ましい。
インサイドハーフ、右サイドバック、そしてアンカー。3つのポジションで起用してきた鬼木達監督も、興味深く成長を見つめている。
「いまだにアンカーが適正なのか、迷いがあるのは正直なところなんです。もっともっと活かせるところもあるだろうなとは思っています。ただ、あそこにいることで、守備でもそうですが攻撃でもキーマンになっていて、攻守においていいバランスを生んでいます。彼への期待はまだまだこんなもんじゃないんだろうなと見ていますし、面白いですよね。アンカーでもあれだけできるので楽しく見ています」
橘田自身は必死だ。「正直、こんなに出られると思っていなかったので、自分としてもびっくりしています」とここまでを振り返る。とはいえ、シーズン序盤から試合には絡んでいて、AFCチャンピオンズリーグのグループステージで躍動。さらに、ラウンド16の蔚山現代戦では尽きることのない運動量で中盤を圧倒して、その地位を確かなものにしたのではないだろうか。
「試合で経験したり、練習でレベルの高い選手とできているので、自然に技術や判断が成長していると思っています」
もちろん意識を高めて取り組んでいるが、努力に努力を重ねてはいつくばって、というより、「自然に」成長できている、という実感に末恐ろしさが宿る。それだけ、ハイレベルのチームメートからなんでも吸収しているということだ。
手応えは、守備。
「このチームは攻から守に変わったときの切り替えが早くて、前の選手がコースを制限してくれて、ここに出てくるだろうと予測してプレーするところは、このチームのレベルでできていると思っています」
予測力で相手より先に動き、鋭い第一歩で奪い切る。その持ち味を磨いてきた。
課題は、攻撃。
「守備だけやっていても試合では使えないと思いますし、より攻撃がうまい選手を間近で見ているので、そういうレベルでプレーしていって、得点やアシストも見せていきたいです。守備ももちろんレベルを上げながら、攻撃で得点に絡んでいければ成長できると思っています」
ACLグループステージの6試合ではプロ初のハットトリックを含む4ゴールで、「まさか自分がハットトリックするとは」という驚きが初々しかった。だが、リーグ戦ではノーゴール。すくすくと伸びていく様子を見ていると、自身のJ1初ゴールでプロ1年目からいきなり優勝決定、という物語を見たくなる。
2位横浜F・マリノスの結果にもよるが、11月3日のJ1第34節で優勝の可能性がある。浦和レッズを相手に決めることができるか。
「一人ひとりの技術が高くて、ポゼッションしながら速いカウンターもあります。とてもうまくて強いチームでした」
浦和と対戦したルヴァンカップ準々決勝では2試合ともフル出場しているが、1-1、3-3という結果の末に敗退させられた。そのときの印象が「うまくて強い」だった。だが、あれから2カ月。すさまじい成長ぶりでさらにパワーアップした姿を、思う存分ぶつけるつもりだ。