名古屋グランパスは30日、ルヴァンカップ決勝でセレッソ大阪を下し、クラブ史上初めて同大会で優勝を成し遂げた。相手にボールを持たれる時間が長くなり、苦しい状況も訪れたが、守備を引き締め、堅守を築いたのがキャンテンマークを巻く中谷進之介だった。

上写真=名古屋ファミリーが陣取るスタンドにこぶしを突き上げる中谷進之介(写真◎小山真司)

支えてくれたファミリーに感謝

 もう一度、自分たちらしく戦うーー。

 3日前に天皇杯の準々決勝で0-3と完敗した相手との『再戦』を前に、中谷は頭の中を整理し、やるべきことをはっきりと認識していた。

「天皇杯で難しい試合をしてしまった。もう一度、自分たちらしく戦おうと。前半はとくかくゼロに抑えて、後半勝負というか。ゲームの流れとしては堅い試合になって、面白みには欠けてしまうかもれないですけど、それが僕たち。自分たちが築き上げてきた戦い方というものを今日はできたかなと」

 決勝の前半は傍から見ると、C大阪にボールを握られる苦しい展開だった。しかし、名古屋の選手たちには焦りはなかったという。ウノゼロで何度も勝ち切ってきた経験と自信がチームに根付く。ここ最近はセットプレーから失点する場面が続いていたが、「セットプレーになった瞬間に声をかけて、『もう一回集中するんだ』ということはみんなで意識しました。天皇杯が終わったときに(監督に)かなりお叱りを受けたので」と修正すべきところははっきりしていた。

 実際、C大阪の攻撃を集中した守備で跳ね返していった。後半、前田直輝が先制ゴールを挙げて、堅く守って1点取って勝ち切る名古屋の勝ちパターンが完成。その後、相手が圧力を強めたことで「守れる自信はあった。正直、危ないシュートを打たれていない。だけど、あそこまで押し込まれてしまったため、取ったボールを展開できなかった。あのまま続くと難しいかなと思っていた」というが、前線に途中出場したシュヴィルツォクという預けどころができ、チーム全体が押し返せるようになると、80分に稲垣祥のゴールが生まれる。「点が入ったときは素晴らしい雰囲気でした」。

「2018年に瑞穂で残留が決まったときとちょっとダブったというか。4年間苦しかったけど、こういう舞台に立てたことは感慨深いものがありました。ファミリーのためにタイトルを取ることができてよかった。『こちらの方こそありがとう』という気持ち。彼らが築き上げてきたものが、今日の僕たちの力になったので、感謝しました」

 聖杯をスタンドに向かって何度も掲げた。それは低迷期を支えてくれたファミリーと、喜びを分かち合う最高の瞬間だった。

「優勝したので、この味をもう一度。一度味わった者にしかわからないものだと思うので、これを続けたい。だからこれを機に、名古屋がまた強くなることを願うというか、僕がそうしたいですし、クラブの規模的にタイトルを取らなければいけないと思うので、そういう争いを続けたいと思います」

 一つのタイトルがまた、次のタイトル呼び込むもの。名古屋グランパスはこの優勝で、新しい時代を始める権利を得たと言える。残留争う苦しい時代を乗り越え、前に進んできた中谷には今、その先頭に立つ覚悟がある。