2021年10月30日、JリーグYBCルヴァンカップ決勝が埼玉スタジアム2002で行なわれた。カップを争ったのは、名古屋グランパスとセレッソ大阪。名古屋は初優勝、C大阪は2度目の戴冠がかかっていたが、持ち味である堅守を見せ、後半2ゴールを挙げた名古屋が2-0で勝利。クラブ史上初めてルヴァンカップ優勝を果たした。

上写真=後半、シュヴィルツォクのシュートのこぼれ球に反応し、追加点を挙げた稲垣祥(写真◎Getty Images)

■2021年10月30日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝(@埼玉ス/観衆17,933人)
名古屋 2-0 C大阪
得点:(名)前田直輝、稲垣祥

・名古屋メンバー:GKランゲラック、DF宮原和也、中谷進之介、キム・ミンテ、吉田豊、MFマテウス、木本恭生(81分:森下龍矢)、稲垣祥、相馬勇紀(58分:長澤和輝)、FW前田直輝(58分:齋藤学)、柿谷曜一朗(73分:シュヴィルツォク)

・C大阪メンバー:GKキム・ジンヒョン、DF松田陸、西尾隆矢、瀬古歩夢、丸橋祐介、MF坂元達裕、奥埜博亮(75分:豊川雄太)、原川力、乾貴士、FW 加藤陸次樹(55分:大久保嘉人)、山田寛人(46分:清武弘嗣)

堅守をベースに前田、稲垣のゴールで勝ち切る!

 前半の45分は、C大阪の時間だった。立ち上がりこそ、名古屋が押し込んだが、10分過ぎからはボールを保持し、ゴールを目指した。だが、名古屋も集中した守備でゴールは割らせない。攻めるC大阪。守る名古屋。そんな構造でゲームは進んでいった。

 0-0で迎えた後半、C大阪は山田に代えて清武を投入し、点を取りにいった。しかし、相手の攻め気を削ぐように、名古屋が裏を突く。相馬が抜け出し、左から鋭いクロスを送る。これはクリアされたが、CKを獲得した。

 キッカーを務めるのは相馬。中と呼吸を合わせて右足で鋭いボールを送ると、ニアに入った柿谷が頭で後ろにそらし、前田がゴール前に飛び込み、ネットを揺らした。前半45分、押していたのはC大阪だったが後半、スコアを動かしたのは名古屋だった。

 攻めざるを得なくなったC大阪に対し、名古屋はリスクを管理しながらボールを奪っては相手の背後を突いていく。C大阪が加藤に代えて大久保を投入して攻めの姿勢を鮮明すると、名古屋も疲れの見え始めた相馬、前田に代えて長澤、齋藤をピッチに送る。システムも4-1-4-1で構えた後、65分過ぎには木本が最終ラインに下がって5バックを形成。5-4-1のブロックで、相手の攻撃を跳ね返していった。

 前半同様に攻めるC大阪、守る名古屋の構図になるが、異なるのは両チームに1ゴールとの差が生まれていたことだ。名古屋はシュヴィルツォクをボール奪取後の預けどころとして投入。その選択が名古屋の次の1点を生む。78分に松田陸のパスから大久保に狙われたピンチの直後だった。

 後方からのボールを受けたシュヴィルツォクがボックス内左に進入。相手DFが足を出すより早く左足で狙った。シュートは惜しくもキム・ジンヒョンに足でブロックされたが、こぼれ球に名古屋の頼れる男が走り込んでいた。稲垣だ。

 ボックス中央から右足で叩きつけると、ボールは勢いよくゴールネットを揺らした。

 10月17日に韓国でACLの浦項戦(準々決勝)を戦い、帰国して24日にJ1の神戸戦に臨んだ。そこから中2日で天皇杯準々決勝のC大阪戦。帰国後はバブルに入り、厳しい行動制限の中で連戦を戦った。浦項に敗れ、来季のACL出場権を得るために勝利が欲しかった神戸と引き分け、そしてC大阪に完敗して(0-3)、天皇杯も敗退した。メンタル的にも厳しい状況に追い込まれたが、名古屋は歩みを止めなかった。天皇杯敗退から中2日で、再びC大阪と対戦したルヴァンカップ決勝。終盤は守る時間が長くなったが、走り、戦い、まさしく今季の名古屋らしさを示してカップを勝ち取った。

 クラブ史上初のルヴァンカップ優勝は、過酷なスケジュールに向き合い、真正面から戦い切った証だろう。2019年シーズン途中に就任したフィッカデンティ監督は決勝前日の会見で、「すべてを変える必要があったチームが2年でここまで来た」と胸を張っていたが、タイトル獲得という結果で、その歩みの正しさも証明した。

 クラブが手にしたタイトルとしては2010年のJ1優勝以来、11年ぶりの戴冠。「決勝で勝つことで、いろいろなものが良い方向につながる」。指揮官の言葉が示す通り、ここから名古屋グランパスの新しい歴史が始まっていく。

取材◎佐藤 景