川崎フロンターレが明治安田生命J1リーグで王手をかける一方で、もう一つのタイトルである天皇杯では10月27日に準々決勝を戦う。立ちはだかるのは因縁の鹿島アントラーズ。鬼木達監督は絶大なる自信を携えて難敵を倒す。

上写真=5月の鹿島戦で劇的勝利を収めて鬼木達監督もこの表情! 天皇杯準々決勝でも喜びたい(写真◎J.LEAGUE)

「自分たちのどこが危険なのかは理解している」

 リーグ戦と一発勝負のカップ戦では、監督のマネジメントにも変化が表れる。天皇杯準々決勝の鹿島アントラーズ戦を前にして、鬼木達監督もメンバー選考に思考を巡らせる。

「相手との相性や、120分まで戦う覚悟で勝っていくことを考えて、メンバーを選びたいと思っています」

 引き分けがなく、延長戦、PK戦も見据えた選手をセレクトする。負ければ終わり。連覇を掲げるチームにそれは許されない。

 しかも、相手は鹿島だ。その勝負強さ、したたかさ、心と体の強靭さ、どれをとっても憎らしいぐらい強い。ただ、鬼木監督がプロキャリアを始めたクラブだから、そのDNAはこちらにも息づいている。

「バトルを制すると主導権が取れる」

 鹿島との戦いでは常にそれが最大の分かれ目だ。

 鹿島は直近のリーグ戦でFC東京を2-1で下している。相馬直樹監督は、序盤から早いタイミングで相手陣内にボールを送り込んでから、できるだけ高いエリアでプレーしようとする戦いを授けて2点を先行し、逃げ切りに成功した。

「長いボールは印象としてはもともと多いと思っています」

 鬼木監督は織り込み済みだ。

「前へ前へというサッカーは、鹿島だけではなくフロンターレでも町田でも相馬さんが意識されているものなので、全面に出してくる印象です」

 かつてはチームメートとして、あるいは監督を支えるコーチとして共闘した「仲間」だからこそ、わかることがある。

 今季はすでにリーグで2度の対戦を終えていて、どちらもスコアは2-1。しかもいずれも、アディショナルタイムに決勝ゴールを決める劇的勝利だった。

「できれば、劇的な形ではなくて主導権を握っていきたいんですけどね」

 そんな苦笑いもこぼれたが、その2試合で気になったのは、いわばカオスを作り出してくるようなロングパスと肉弾戦、だけではないという。

「鹿島は前回の対戦で狙いを持って攻撃してきて、その手応えは感じていると思います。でも、自分たちのどこが危険なのかは理解しているつもりです。そこを考えながらも引っ張られすぎずに、自分たちらしさを出していきたい」

 それがどんなことなのか、どう対応していくかはもちろん口にしないが、「強気でいきます」の言葉がヒントになるだろうか。

 とにかく、激闘に次ぐ激闘になることだけは間違いない。魂を削り合うような決戦が、間もなく始まる。