浦和レッズの攻撃サッカーを仕上げたのは、汰木康也だった。10月22日、明治安田生命J1リーグ第33節の「金J」で浦和レッズは柏レイソルに5-1で圧勝したが、汰木が先制点と3点目を決めた。最後尾からつないで相手を崩し、チームの意図が反映された2発に喜びもひとしおだった。

上写真=汰木康也がマルチゴール。2点ともパワーのあるキックが魅力的だった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年10月22日 明治安田生命J1リーグ第33節(@埼玉/観衆11,172人)
浦和 5-1 柏
得点者:(浦)汰木康也2、関根貴大、キャスパー・ユンカー、江坂任
    (柏)マテウス・サヴィオ

「中央に入って行くシーンが増えてきた」

 スラロームのようなドリブルが魅力の汰木康也にはもう一つ、大きな武器があることを改めて思い起こさせてくれた。パンチの効いた右足のキック。

 柏レイソルを5-1で圧倒したJ1第33節で、汰木の2ゴールが輝いた。1点目は15分。酒井宏樹、平野佑一、柴戸海と自陣の素早い横パスで相手を食いつかせ、その後ろ側にいた江坂任にボールを入れて、柏の積極プレスをきれいにかわした。左前に走ったキャスパー・ユンカーの足に滑り込ませた江坂のパスコースとクロスするように汰木が右に出ると、ユンカーからのラストパスを受けて、右足でバチンとたたくキックでゴール左に送り込んでみせた。

 トラップが少し右に流れたことで角度がなくなったが、それでも名手キム・スンギュを破ったのは、「思い切り足を振ってやろう」とボールにパワーを込めたからだ。

「最初は自分が斜めに走って、直接(江坂)任くんからもらおうと思っていました。それが結果的にクロスするような動きになって、キャスパー(ユンカー)にボールが入ったあと、そのままシュートを打つかなとスピードを緩めちゃったんですけど、信じて走り込めて、ゴールまでつながりました」

 江坂のパスコースをまたぐようにしてスペースに走り込んだことで、「3人目」の動きになって完全に最終ラインを崩した。そして何より、「後ろからつないでというゴールシーンだったので、僕だけじゃなくチームとしても自信になる1点だったんじゃないかと思います」という事実がうれしい。

 自身の2点目、チームの3点目は、山中亮輔の左からのセンタリングをブロックした相手のクリアがペナルティーエリアの中にいた汰木の足下にこぼれてきて、ワントラップから右足のインフロントで巻くようにしてゴール右に送り込んだもの。「相手のクリアミスでしたけど、ファーストタッチでいいところに置くことができて、得意な角度だったので冷静にゴールを見て流せました」とキックの精度の高さを誇ったが、もう一つ、「その場所」にいたことも大きい。

 山中の復帰によって、同じ左サイドで縦関係のコンビを組むが、左サイドの深いエリアはオーバーラップしてくる山中に任せて「中央に入って行くシーンが増えてきたのも要因」と分析する。まさにこの2点目は柴戸のロングフィードで左の奥を山中が取ったことで、汰木が中央で待ち構えることができたからこそだった。

「自分のゴールシーンも含めて、前節(ガンバ大阪戦)の、ラストのゴール前でのクオリティーを上げていこうという反省点を生かせたので、チームとして自信になるゲームだったと思います」

 チーム全体に確かな自信を植えつけたのは、この汰木の2ゴールだったことは間違いない。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE