名古屋グランパスは17日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準々決勝に臨み、浦項スティーラーズ(韓国)と対戦した。前半は名古屋ペースで進んだが、後半にCKから失点すると、相手の勢いに飲み込まれて、さらに失点。反撃はかなわず0-3で敗れた。名古屋が敗れたことで今季のACLから日本勢は姿を消すことになった。

上写真=浦項にまさかの3失点を喫し、名古屋は敗れた(写真◎2021 AFC)

■2021年10月17日 ACL準々決勝(@全州)
浦項 3-0 名古屋
得点:(浦)イム・サンヒョプ2、イ・スンモ

・浦項メンバー:GKイ・ジュン、DFパク・スンウク、クォン・ワンギュ、アレックス・グラント、カン・サンウ、MFシン・グアンフン、シン・ジノ、マヌエル・パラシオス(89分:クォン・ギピョ)、コ・ヨンジュン(66分:イ・スビン)、イム・サンヒョプ、FWイ・スンモ(79分:イ・ホジェ)

・名古屋メンバー:GKランゲラック、DF宮原和也(78分:成瀬竣平)、中谷進之介、キム・ミンテ、吉田豊、MF稲垣祥、木本恭生、マテウス(61分:相馬勇紀)、柿谷曜一朗(78分:金崎夢生)、森下龍矢(57分:前田直輝)、FWシュヴィルツォク

こんな去り方はさせたくなかった

 前半、名古屋は攻守両面で浦項を上回った。ボールを握ってチャンスを生み出し、守備でも高い集中力と連動性、素早い切り替えで大きなピンチとなる前にボールを奪回した。

 名古屋の力をよく知る相手がやや慎重にゲームをスタートさせた面はあるだろう。グループステージの対戦は名古屋の1勝1分け。1勝は3-0の完勝で、1分けはラウンド16進出決定後の試合。地力に勝る名古屋が今回のゲームも優位に進めていった。

 しかし、ゴールはなかなか生まれない。前半最大の決定機は31分。シュヴィルツォクと柿谷のパス交換から左サイド深く進入した森下がクロスを供給。ゴール正面にポジションを移動していたシュヴィルツォクが狙ったが、シュートは枠をとらえられなかった。33分にもマテウスのドリブルからパスを受けたシュヴィルツォクが狙うがDFに防がれる。さらにこぼれ球に稲垣が詰めたものの、体を張って守る浦項守備陣の前にネットを揺らせなかった。

 いい形でゴールに迫っても点につながらない展開は、得てして相手にビッグチャンスをもたらすものだ。前半は焦れることなくチャレンジし、守備でも高い集中力を維持していた名古屋は後半早々、一瞬のスキを突かれてしまう。53分の相手の右CKの場面。ジン・ジノのボールからゴール前の混戦になると、こぼれ球をイム・サンヒョブに押し込まれてしまった。

 追いかける立場になった名古屋は、森下に代えて前田、マテウスに代えて相馬を投入。フレッシュな選手をピッチに送って反撃に出る。だが、1点を取った浦項は守備の強度を上げ、激しい守りで名古屋の攻めを封じてきた。

 すると70分、前がかりにならざるを得ない名古屋は手薄になった守備陣を突かれることになった。GKのフィードからアバウトにつながれ、最後はイ・スンモにシュートをねじ込まれた。1点を取りにいく中での失点は精神的にもきつかったかもしれない。2点差がついた後、名古屋はなかなかボールを奪うことができず、選手の距離感も悪くなって、ますます攻撃の形がつくれなった。

 終了間際にもイム・サンヒョプに決められ、試合は0-3で終了。名古屋は後半、失点を機にリズムを失い、相手に運動量で上回られて持ち味を発揮できなかった。過密日程による疲労の蓄積の影響もあったに違いないが、グループステージで名古屋が記録したスコアで相手にリベンジを許すことになってしまった。

「前半は素晴らしい内容と評価していいものでしたが、サッカーは点を取るスポーツなので、あれだけの大きなチャンスをゴール前で得ながらモノにできずに前半を終えてしまって、後半は同じようにいかないのがサッカーだと教えられることになってしまいました。
 後半、やっと浦項にチャンスらしいチャンスが来て、その1本目を決められてしまった。そのあとはしっかり守るベースを持っているチームですから。2点目もわれわれがそれほど不利なシチュエーションではなかった中で得点をされてしまった。何かしっくりこないままずっと試合が流れてしまったという感覚で選手は戦ったと思います。ここまでこの大会を彼らが必死になって戦い、最後、このレベルまで来て、最後にこういう試合で終わったのはすごく残念ですけども、0-3というスコアが相応しかったというと、今日の戦いを見てそうではないと思いますし、こんな去り方はさせたくなかったという印象を持っています」(フィッカデンティ監督)

 唯一残っていた名古屋が敗れ、今季のACLから日本勢は姿を消した。これがサッカーと言ってしまえばそれまでだが、前半の二つのビッグチャンスに決め切れなかったことで、名古屋は後半に浦項の積極性を引き出すことになってしまった。

「残りの国内のカップ戦、リーグ戦で自分たちの強さを証明しよう」

 指揮官は試合直後のロッカールームで、選手たちにこう話したという。タイトな日程の中での戦いも「試合を内容を見れば勝てるチャンスはあった」と振り返り、疲労の蓄積を言い訳にはしなかった。今後も続く過密日程についても「強さを証明するチャンス」と受け止めていた。

 アジアの舞台は去るものの、シーズンはまだまだ続いていく。ここからチームとしてどう切り替えて、どんな戦いを見せるかが重要だとフィッカデンティ監督は強調した。