セレッソ大阪の同点弾を決めたのは、約3週間前の落ち込みからV字回復した山田寛人だった。10月6日のJリーグYBCルヴァンカップ準決勝第1戦で、浦和レッズを相手に数多くのチャンスを迎える中で、66分に同点弾を蹴り込む活躍だった。

上写真=66分に山田寛人が同点弾。準々決勝第2戦の今季初ゴールに続き、またもルヴァンカップで決めた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年10月6日 JリーグYBCルヴァンカップ 準決勝第1戦(@埼玉/観衆8,734人)
浦和 1-1 C大阪
得点者:(浦)キャスパー・ユンカー
    (C)山田寛人

「2人でバーに当てまくったので」

 セレッソ大阪が浦和レッズを押し込んでいったのは、2トップのきらめきがあったからだった。加藤陸次樹と山田寛人。

 山田はまず39分にビッグチャンスを迎える。左サイドでペナルティーエリアに入ってボールを受けると、浦和のキャプテンマークを巻く百戦錬磨のDF槙野智章の股下を通して抜き去った。すかさず迷いなく至近距離から右足を振ったが、GK鈴木彩艶にブロックされた。

 次は加藤。56分に左から丸橋祐介がニアにクロスを届けると、相手より先に突っ込んでいってヘッドで合わせたものの、バーを直撃した。直後に今度は右から乾貴士が折り返すと、山田が右足を伸ばしてゴール方向に蹴り出した。しかしこれもバーに弾かれる。74分には加藤がミドルレンジから左足で強烈なフィニッシュ。ところがこれもまたバーをたたく羽目に…。

 それでも、山田は同点に追いつくゴールを生んでいる。66分、右サイドの深い位置で坂元達裕がボールを収めると、右足で得意の切り返しから左足のクロス、と思って一瞬、相手が止まったところでそのまま右足でセンタリング。これがゴール前を通過して浦和の選手は誰もクリアできず、山田はそのままゴールに送り届けるだけでよかった。

 ただ、「やっぱりもう1本決めたかったですね」と山田はゴールの喜びとともに、少し苦笑いして残念がった。

「2人でバーに当てまくったので」

 そのどれかが決まっていたら、アウェーで勝ち星を手にできたかもしれない。それでも、その加藤との相性の良さを改めて実感している。

「ムツ(加藤)との関係性は良くて、久々に組みましたけど改めてそれを感じたので、次はもっといい形でゴールにつなげられると思います」

 およそ3週間前の9月18日に同じ埼玉スタジアムで浦和と対戦して、0-2で敗れていた。チームとしても厳しい敗戦だったが、山田自身にとっては自分を追い込むほどの苦々しい思いがあった。

「この前、ここでやった試合では自分が不甲斐ないプレーをして落ち込んだのを覚えていて。考え込んでしまうこともあってプレーがうまくいかなかったし、前回悪かった分、今日は自分で決めて勝ちたい思いがありました」

 メンタル的に底を打ったあの試合から、見事にV字回復して、思いを込めた同点弾が生まれた。しかも、アウェーゴールでチームに優位をもたらした。

「チャンスも全部入れば楽な試合になったと思いますけど、とりあえず引き分けで第2戦を迎えられてよかったです」

 決められなかったたくさんの絶好機は、中3日で迎える第2戦のゴールの種にすればいい。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE