10月2日の明治安田生命J1リーグ第31節で行われた「多摩川クラシコ」。川崎フロンターレはFC東京の猛攻に手を焼いたものの、終わってみれば1-0の無失点勝利だった。守備の奮闘が目立ち、23分に車屋紳太郎がアダイウトンを止めきったシーンは象徴的。難しい決断を迫られた車屋は何を考えていたのか。

上写真=車屋紳太郎は最後まで冷静にFC東京の猛攻をしのいだ(写真◎小山真司)

■2021年10月2日 明治安田生命J1リーグ第31節(@等々力/観衆9,789人)
川崎F 1-0 FC東京
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン

「久々に無失点で終わることができてよかった」

 いつ失点してもおかしくなかった。J1第31節の「多摩川クラシコ」。川崎フロンターレはFC東京の猛攻をしのぎにしのぐ展開が続いた。

 AFCチャンピオンズリーグを戦った韓国から帰ってきて隔離措置が続き、9月30日からは帰宅できたものの、15日間で5試合を戦う過密日程。最後の2試合は中2日で連続していて、これがようやく迎えた最後のゲームだった。疲労で足が動かない。気力を振り絞る90分になった。

 その象徴として語られるのが、2人のセンターバックの2つのビッグプレーだろう。74分、裏に蹴り出されて永井謙佑に走られ、GKチョン・ソンリョンもかわされてがら空きのゴールに蹴り込まれる。しかし、ゴールを割る寸前に、猛ダッシュで帰ってきたジェジエウがクリアした。

 もう一つが、車屋紳太郎だ。23分、ハーフウェーライン付近でジェジエウが奪われ、アダイウトンが自慢の高速ドリブルで右サイドを一人で駆け抜けてくる。車屋は逆サイドからのロングダッシュでカバーに回った。

「難しかったですね。早く行き過ぎると逆サイドからの選手もいましたし、遅すぎるとシュートまで持っていかれてしまう」

 ゴールの位置、アダイウトンのスピード、中央に入ってくる高萩洋次郎と自分の背中側に回ってきたディエゴ・オリヴェイラとの位置関係を把握しながら、しかも全速力で戻りながら高度な判断を求められた。

 車屋が選んだのは、最後の最後でギアを上げて一気にアダイウトンに寄せる決断だった。アダイウトンがシュートフェイントから切り返すのを読み切っていて、左足に当ててブロック。「ちょうどいいタイミングで取れたと思います」という自画自賛のプレーがチームを救った。ここ2試合は前半のうちに失点して苦しんでいただけに、このビッグプレーは重みを持つものになった。

 その前半の終了間際にレアンドロ・ダミアンが決めて先制、後半も攻め込まれながら交代策をうまく使いながらパワーを失わずに戦い続けた。車屋も81分からは左サイドバックに回り、まさに総力戦で乗り切った。

「選手交代を含めてしっかり守りにいくことで時間の使い方もよかったし、最後に足が一歩出るか出ないかの瀬戸際で戦っていて、90分を通してみんなよくやっていたと思います」

 そして何よりも、守備陣としては「久々に無失点で終わることができてよかった」と、5試合ぶりのクリーンシートが最高のご褒美になった。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司