FC東京は22日、J1第32節で名古屋グランパスと対戦し、1-1で引き分けた。長友佑都にとっては加入2戦目の試合だったが、この日もフル出場。試合後にはイタリア時代にともに戦った名古屋の指揮官、マッシモ・フィッカデンティ監督への感謝の思いを語った。

上写真=手を叩き、声を出し、チームを鼓舞する長友佑都(写真◎山口高明)

守備の大切さを教えてくれた

 長友にとって名古屋の指揮官マッシモ・フィッカデンティ監督は自分をヨーロッパに導いた恩人でもある。2010年7月、FC東京から長友はフィッカデンティ監督が率いるチェゼーナに加入した。

「僕は監督としても人としても大好きです。チェゼーナの時代から戦術的に、しっかり守備をして攻撃につなげていくという、僕に守備の大切さだったり戦術というものを教えてくれた監督でもあります」

 海外初挑戦だった長友はフィッカデンティ監督のもとで定位置を勝ち取り、セリエAの舞台でも力を発揮できることを証明。加入から半年後の11年1月には、名門インテルにレンタル移籍し、ステップアップを果たした。ヨーロッパでキャリアを築く、そのスタートにフィッカデンティ監督との出会いがあった。

 この日、Jリーグで対戦相手として久々に再会することになったが、試合前に挨拶する機会があったと長友は明かした。「監督がスタジアムに着いたところを待っていて話をしました。当時の懐かしい思い出とともに、自分自身は成長したんだということと、あなたのおかげで僕自身はイタリアで勝負できたし、インテルにも行くことができた。そういう感謝を伝えました」。感謝の思いとともに、長友は名古屋戦のピッチに立った。

 アディショナルタイムを含めた95分間、左サイドバックとしてプレーした長友は、対面するマテウスや、頻繁にサイドに流れてくる前田直輝とバトルを繰り広げながら1対1の強さを発揮した。そして何度も声を出してチームを鼓舞し続けた。安部柊斗が明かしたところによれば、トレーニングでも最初から最後まで声を出し続けているという。熱さと厳しさをもたらすことが自分の使命と語る長友は加入直後からより勝負強いチームに変えようとしている。その姿勢はこの日のピッチでも見て取れた。レアンドロ退場したあと、一人少ない状況になってからも積極的に声を出し、アグレッシブさを保つように仲間を鼓舞していた。

 結局、名古屋戦は先制しながらも勝ち切ることはできなかった。ACLの出場権獲得という目標を達成するには、上位陣との直接対決で勝つことは重要だ。そう考えれば、引き分けことは痛い。しかし、長谷川監督も語ったように前節に続き、「熱い試合」を見せることはできた。その熱の源として、長友が果たしている役割は大きい。戦前、敵将フィッカデンティ監督は長友について聞かれ、こう答えていた。

「今まで海外でプレーした日本人選手の中で、一番の経歴を持っている。そんな選手がFC東京に加わる。彼の持っている世界に通用するクオリティーと経験は大きいと思います。私自身も東京というチームに変わらず愛情を持っていますが、チームが与えてくれるものと、その愛情に応えたいと、おそらく佑都も思っているでしょう。他のチームに加わるよりも、その東京に愛情をもって受け入れられた彼が、どれだけチームに与えたいものがあるかと考えると、対戦相手としてはすごく怖い感覚があります」

 試合後、フィッカデンティ監督に長友評を聞くことは出来なかったが、おそらく、チームへの影響力を増した姿を確認できたのではないだろうか。そして2度目の対戦がすぐにやってくる。ルヴァンカップ準決勝(10月6日、10日)で、再びFC東京と名古屋は対戦する。

 今回、試合はドローに終わった。次は言わば決着戦。長友は再び成長した姿をピッチで見せ、結果も出すつもりでいる。