期待のウインガーがついに決めた。9月22日に行われた明治安田生命J1リーグ第32節で川崎フロンターレは鹿島アントラーズと対戦。先制された川崎Fは山村和也の同点弾のあと、90+4分に宮城天が強烈なミドルシュートをたたき込んで劇的な逆転勝利を収めたのだった。

上写真=宮城天が劇的な逆転ゴールを決めてこの笑顔!(写真◎J.LEAGUE)

■2021年9月22日 明治安田生命J1リーグ第32節(@カシマ/観衆4,925人)
鹿島 1-2 川崎F
得点者:(鹿)ファン・アラーノ
    (川)山村和也、宮城天

「何本かに一回出るシュートが打てちゃった」

 宮城天の右足がうなった。90+4分だった。前線へのロングパスのクリアを脇坂泰斗が拾ったところがスタートだ。宮城にボールが渡るとミドルシュート。これはDFにクリアされてしまった。

「最初のシュートで入っちゃうかと思ったら入らなくて、でも一発目のシュートがいいイメージでした」

 はね返りを家長昭博が右サイドで拾って山根視来に戻し、もう一度宮城へ渡す。今度もペナルティーエリアの外で左足で止めてから迷いなく右足を振ると、ボールは無回転でブレ球になってGK沖悠哉の手をかすめるようにしてゴールに突き刺さった。「たまたま入っちゃった」と笑うが、J1初ゴールがドラマチックな大逆転ゴールだ。

「アキくん(家長)から視来くんに戻してから、僕に来たら打とうと思っていました。何本かに一回出るシュートが打てちゃった」

 冷静に振り返るのだが、言葉は弾む。

「無回転は狙いました。芯をたたく練習はしてきましたから、練習の形が出たかなと思います」

 三笘薫がヨーロッパに旅立ったあと、長谷川竜也と左ウイングのポジションを争った。そこへマルシーニョが新戦力として加わって、この2試合は先発の座を奪われていた。スピード自慢のマルシーニョと比べて「特徴は違うし、結果で争っていかなければダメなのかな」と思う中で、その欲しかった結果を残した。

 マルシーニョはデビュー戦となった前節の徳島ヴォルティス戦で全3ゴールに絡む活躍で、宮城も「チームとしてはマルシーニョが加わったことはプラス。でも、スタメン争いで負けたくない」と闘志を燃やし、ポジション争いが一気にホットになってきた。

 この日はそのマルシーニョに代わって67分に入ったものの、ドリブル突破はことごとく止められて、鬼木達監督も「試合に入れていないようだった」と心配したほど。それでも最後の最後に大仕事。

「優勝するために負けられない一戦でしたし、引き分けも許されない状況でした。先制されたけど負ける感じはしなかったし、落ち着いてやった結果、逆転という結果に表れました」

 驚くほどクールに振り返る姿は、どれだけ強くなってもどこまでも高みを目指す川崎F育ちのDNAによるものだろう。

写真◎J.LEAGUE