またも繰り返してしまった。アウェー連戦からのホーム帰還、その最初のゲームでトーンダウン。FC東京が9月12日の明治安田生命J1リーグ第28節で柏レイソルにミスから1点を献上してそのまま逃げ切られた。集中力に欠けたような試合の入りで自滅する悪癖を強制的に直すために、安部柊斗は自らの発信が足りなかったことを悔やんだ。

上写真=安部柊斗は自身の好調をチームの勝利に結びつけられずに悔やんだ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年9月12日 明治安田生命J1リーグ第28節(@味スタ/観衆4,987人)
FC東京 0-1 柏
得点者:(柏)細谷真大

「チームの士気を上げるような発信をしていきたい」

 長谷川健太監督は試合の直後に珍しく興奮気味に、選手たちにタフなメンタルを求める発言を続けた。2年前にアウェー連戦から戻ってきたときの停滞感が、同じくアウェー7連戦のあとの重要なホームゲームでチームを包んでしまった。

「消化不良の試合をしてしまって、試合を見てくださったサポーターのみなさん、スタジアムに応援に来てくれたサポーターのみなさんに大変申し訳ないと思っています。
 ホームに戻ってきてクラブがいろいろと盛り上げてくれて、やっと青赤のユニフォームをこのスタジアムで見て、戻ってきたなという思いでやりましたけれど、もっと思いをピッチ上で出さなければいけなかったと思います。
 もちろん出し切ることできなかったのは、出させることができない監督の責任だと思っていますが、ミスで失点したあとに味方のミスをみんなで取り返す強い、熱い思いを、残りは80分ぐらいあったので持ち続けて戦えば逆転できたと思います。
 後半は数多くチャンスがあって、押し込むんだという気持ちがあるかないか。気持ちのことばかり言って申し訳ないのですが、それが枠に転がるか1メートル外れるかの違いになるんです。
 途中から出た選手が気持ちを全面に出して、結果を出してポジションを取ってやるんだ、という思いでやってほしいですし、先発の選手も80分もあるからオレらがミスは取り消すからという気持ちでやることができれば、結果につながったと思います。
 こういう過ちを二度と繰り返さないように熱い気持ちで臨んで、結果を求めてやっていきたいと思います」

 安部柊斗はピッチの上で、何かがおかしいと感じていた。

「何が原因かわからないですけど、入りがぬるいことは選手全員が感じていたと思います。その中で失点もしてしまったし、それもミスからで、気持ちとしても落ちるような失点の仕方だったけど、そこからもう一度行こうという発信を誰かがしないと盛り返せないと思います」

 開始9分に、柏レイソルのロングパスを処理しようと出てきたGK波多野豪とDF渡辺剛の連係がずれて、2人の間に割って入った細谷真大にかっさらわれて決められた。

「今日は静かな印象があったので、そこはボランチからも声を出していかないといけないので、自分からもチームの士気を上げるような発信をしていきたいと思います」

 安部自身は好調で、攻撃に入ればボランチのポジションからどんどん前にせり出していって、細かいパスを好むレアンドロやディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトンのブラジルトリオをサポートしながら絡んでいく。これが後半の修正の重要なポイントになった。

「ハーフタイムにもう1回押し返そうと話していました。前半の入りが良くなかったので後半はしっかりと入ろうと言って入って、相手陣地でプレーできるようになり、高い位置でボールを受けることを意識しました。前にうまく集まって、そこからスルーパスを出すことを意識していました」

 ブラジルトリオのパスの受け手として、思い切り裏に抜け出すプレーが持ち味だ。加えていまは、受けてから強引に持ち込むだけではなくて、周りを使ってあげる余裕も生まれてきた。

「前よりは見る回数やタイミングが良くなっているというのがあります。見ることで落ち着きが出るので、技術面の練習もしていますが、見る回数とタイミングがいいと思っています」

 集める情報の数が増え、整理するスピードが高まっているという実感だ。そうして落ち着きが生まれれば、チーム全体が見えてくる。

 だから、苦境をはね返すために先頭に立つのだ。安部は、長谷川監督が言う熱い気持ちをすでにそのタフなプレーで示している。だから今度はそこに声や態度を加えて、青赤を導く本物のリーダーになることが強く求められている。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE