川崎フロンターレがアディショナルタイムにゴールを浴びて、敗退を余儀なくされた。9月5日のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝第2戦は川崎Fにとって悲劇的な幕引きとなった。しかし、レアンドロ・ダミアンが決めた同点ゴールは、技術と判断とコンビネーションの粋を集めたこのチームらしい一発だった。

上写真=レアンドロ・ダミアンは前半途中から小林悠と2トップで並んで、守備のタスクをこなした(写真◎J.LEAGUE)

■2021年9月5日 JリーグYBCルヴァンカップ 準々決勝第2戦(@等々力/観衆4,936人)
川崎F 3-3 浦和
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、山村和也、ジョアン・シミッチ
    (浦)江坂任、キャスパー・ユンカー、槙野智章

センターバックを抑えるために2トップへ

 ルヴァンカップで準決勝進出を逃したからといって、そのゴールの素晴らしさまで損なうことはない。

 9月5日のルヴァンカップ準々決勝第2戦。第1戦を1-1で終えて、3カ月ぶりにホームの等々力陸上競技場に戻ってきた川崎フロンターレは、浦和レッズの挑戦を受けた。8分に先制されながらも前半のうちに追いついたが、それが40分のレアンドロ・ダミアンのゴールだ。技術とコンビネーションがたっぷり詰まった、まさしく「フロンターレゴール」だった。

 浦和のクリアを左で拾った田邉秀斗が、すかさず左外の宮城天に預ける。宮城は右横に降りてきた家長昭博に強く正確に通すと、家長が左足でワンタッチのノールックパスを裏のスペースへ滑り込ませた。動き出していた小林悠がすり抜けて受けると、こちらもワンタッチで中央へ。中央奥でフリーになっていたレアンドロ・ダミアンもまたワンタッチで、右足でがら空きのゴールに送り込んだ。

 相手のクリアを拾ってすかさず相手の嫌がる前のスペースに送り込んだ田邉の判断と確実性に始まり、宮城のパスの強さと家長のテクニック、小林の動き出しとラストパス、レアンドロ・ダミアンの予測と、すべてが完璧にかみ合った美しいゴールだった。

「良いプレーが前線でできたと思います。立ち上がりからからスペースがどこにあるか意識しながら入りましたし、あのシーンでは(小林)悠が裏に動き直して奥までえぐったところで、しっかりディフェンスの前に入ることができたと思います」

 8分に先制されて「立ち上がりは入りが良くなかった」と反省したが、流れを引き寄せたのは布陣の微調整が大きい。いつもの4-3-3から4-4-2へ。右のワイドで先発していた小林をレアンドロ・ダミアンと2トップに並べた。鬼木達監督は「センターバックに自由にさせすぎて構えてしまったので、わかりやすく2人で追い出せるようにしました。そこがメインと言っていいかもしれません」と、2トップで2センターバックを抑える守備の効果を期待した変更だと明かした。

 この守備のタスクをこなすことによって浦和のリズムを分断、川崎Fが攻勢を取り戻したというわけだ。最前線に2人が立つことでパスの出口も増えて、それが同点ゴールにもつながった。

 77分に山村和也が、83分にジョアン・シミッチがいずれも脇坂泰斗の左CKをヘッドで決めて3-1としたところで、レアンドロ・ダミアンは84分にお役御免、知念慶と交代した。ところがここから悪夢が訪れる。87分と90+4分にまさかの連続ゴールを浴びて、3-3で試合終了。2試合合計で4-4となり、アウェーゴールの差で敗退を突きつけられた。レアンドロ・ダミアンはベンチから悔しさをかみ締めるしかなかった。

「あのタイミングではピッチの外にいましたが、チームは最後の最後まで戦ってくれたと思います。浦和さんも最後までゴールを目指して戦った結果だと思います。ピッチにいることができなかったのは残念に思いますが、やはり今日の敗戦に学んでしっかりと次に生かしていきたいと思います」

 こんな悔しさはあってはならないが、受け止めなければならない。「次」はAFCチャンピオンズリーグのラウンド16だ。9月14日に韓国の蔚山とアウェーで対戦することになっている。コロナ禍の影響でホーム・アンド・アウェーではなく、一発勝負。

「しっかりと良い分析をして、このようなことが起こらないようにしていきたい」

 教訓はまず、アジアチャンピオンになるために生かしていく。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE