川崎フロンターレは9月5日の浦和レッズとの準々決勝第2戦で、JリーグYBCルヴァンカップ準決勝進出をかける。1日の第1戦では小塚和季が後半から登場、同点ゴールにつながる味のあるパスを送り込んで貢献した。「違いを出していきたい」の思いを込めた素晴らしい1本だった。

上写真=小塚和季が浦和戦で、小林悠の動きに合わせた絶妙の浮き球のパスを送って、同点につなげた(写真◎J.LEAGUE)

「目に見える結果を出したかった」

 小林悠いわく、チームで数少ない背後へのパスを「落とせる」選手。小塚和季は攻撃的なスタイルを掲げる川崎フロンターレの中でも、また独特の感性を持ったパサーだ。

 9月1日、浦和レッズとのルヴァンカップ準々決勝第1戦では、後半開始から小林とともにピッチに入った。前半早々に右サイドバックのイサカ・ゼインが警告を受け、センターバックのジェジエウが負傷で交代、さらには先制ゴールも許してしまって、後半の逆襲を担う存在として送り込まれた。

 小林の言う「落とせるパス」が試合の行方を左右したのは、68分ごろのこと。左サイドでボールを足元に収めて顔を上げると、小林が斜めに中に切り込んでくる。そこへふわりと蹴り上げて、まさに小林の走る先にぴたりと落とすパスを届けた。小林は巧みなジャンプヒールで中に送ると、脇坂泰斗が走り込んだところで倒されて、VARチェックを経て主審がPKの判定を下した。これを家長昭博が真ん中に蹴り入れて、72分の同点ゴールは生まれた。

「球際の部分は強く言われているので、意識していました」

 ピッチに送り込まれるときに、鬼木達監督からはそんなメッセージを送られた。今季、川崎Fに移籍してきてから、自ら課題として向き合ってきたことだ。それは単に守備のためではなく、オリジナリティーあふれるパスセンスを生かすためのもの。

「求められているのは攻撃のところだと思うので、もちろん球際もそうですけど、攻撃の部分で違いを出していきたいと思っています」

 まさに小林へのパスは「違い」だった。ピッチに入ってからすぐの52分にも、右サイドで相手のクリアミスを収め、素早く右足のアウトサイドできれいにスルーパスを滑り込ませて、脇坂のフィニッシュを引き出している。小塚のパスはよく「色気のある」と表現されるが、まさにその言葉がふさわしい2本の決定的なパスだった。

「アキさん(家長)との距離感もよくできていたし、悠さんの動き出しのパスは練習からできていたので、それが試合の中でできたという感じですね。悠さんは常に体がゴールに向かっていて、パサーとしては常に準備していますから出しやすいですね」

 ただ、パスだけにこだわっているわけではない。インサイドハーフはいかにゴール前に入っていってフィニッシャーになれるかも問われてくる。「もう少しゴールやアシストといった目に見える結果を出したかった」と浦和戦の本音も漏らす。

 パスを「落とせる男」が、ゴールを「陥れる男」になるために。ここまでは、AFCチャンピオンズリーグで決めた1ゴールのみだ。負傷者の続出でチームが苦しいからこそ、ここまで出場機会が少なかった分のパワーを集中して、浦和との第2戦で準決勝進出を決める一撃を食らわせるつもりだ。