上写真=戸嶋祥郎のボレーシュートを最後に触って決めた瀬川祐輔とともにこの笑顔!(写真◎J.LEAGUE)
■2021年8月29日 明治安田生命J1リーグ第27節(@三協F柏/観衆4,344人)
柏 2-1 横浜FC
得点者:(柏)瀬川祐輔、クリスティアーノ
(横)渡邉千真
「ミートすることだけを考えて打ちました」
あの大ケガから、ついにフル出場だ。柏レイソルのMF戸嶋祥郎が昨年9月27日に左脛腓骨を骨折、今年6月23日に復帰してから、8月29日、J1第27節の横浜FC戦で初めて90分を戦い抜いて、勝利の立役者になった。実に感慨深い日になった。
4日前の徳島ヴォルティス戦を終えてから、「監督から喝を入れられまして」と戸嶋は明かす。
「もう後がないと引き締めて臨みました」
ネルシーニョ監督は喝ではなく「1対1で話をしました」という表現を使って説明したが、ボールを奪い切る良さを最大限に発揮してほしい、100パーセントの力でプレーしてほしい、と伝えたという。
その効果か、危険なスペースを埋め、遠慮抜きでボールにアタックし、奪い取り、展開して、走って、そしてまた走った。圧巻のプレーだった。
「今日の収穫としては90分出られたことです。ラッキーですけど、アシストもついて良かったかなと思っています」
アシスト、とは、29分の先制ゴールを導いたフィニッシュだ。相手のパスミスが戸嶋のところにこぼれてから始まったシーン。ゴール正面でトラップしてから右に送ったパスは少し流れてしまうのだが、クリスティアーノがぎりぎりで追いついてくれて折り返し、相手のヘッドのクリアが短くなったボールがまた戸嶋の目の前へ。
バックステップを踏みながらの難しいボールだったが、ほどよく力が抜けた、しかししっかりとたたいた右足のボレーシュートを放った。ボールはゴールに一直線…と思ったら、瀬川祐輔に当たってコースが変わり、ゴール右に飛び込んだ。
「奪った瞬間のところから考えれば、もっと効率的にゴールに直結するプレーの選択肢があれば良かったと、つまり(最初のこぼれ球で)シュートを打つのがベストだったと反省しています。でも、こぼれてきたシーンはミートすることだけを考えて打ちました。枠にはいっていたと思うのでよかったです」
瀬川に当たっていなければ自らの「復帰ゴール」になったかもしれない。でも、戸嶋はさすが、そんなふうには考えない。
「当たっていなければ、キーパーの正面だったと思います。次はしっかりとキーパーの脇に決められるように練習したいと思います」
その謙虚さ、誠実さが人を引きつける。
ネルシーニョ監督はこの日の戸嶋を称えて、「ムイト・ボン、ムイト・ボン」と2度繰り返した。「muito bom」はポルトガル語で「とても素晴らしい」という意味である。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE