横浜F・マリノスの焦りを誘ったのは、2年目のアタッカーのヘッド一発だった。8月28日の明治安田生命J1リーグ第27節。鹿島アントラーズは2位の横浜FMと戦って、荒木遼太郎が15分に右からのクロスをヘッドでたたいて先制に成功した。これで今季9得点。チーム単独トップに躍り出た。

上写真=荒木遼太郎の今季9点目で鹿島が15分に先制。2ケタまであと1だ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年8月28日 明治安田生命J1リーグ第27節(@日産ス/観衆4,829人)
横浜FM 0-2 鹿島
得点者:(鹿)荒木遼太郎、上田綺世

「綺世くんとは非常にいい関係ができている」

 2年目のアタッカーが、早くも9得点だ。

 鹿島アントラーズの荒木遼太郎がプロになって初めて決めたヘディングシュートだった。8月28日、横浜F・マリノスと対戦したJ1第27節。15分にそのチャンスが巡ってきた。自陣右サイドの最後尾からのFK。GK沖悠哉が大きく蹴り出すと、ボールがそのまま流れて横浜FM陣内深くに走っていく。いち早く追いついたのは土居聖真。鋭いクロスボールを、荒木が中央で気持ちよくヘッドでたたき込んだ。

 最初からその場所でヘッドを狙っていたわけではなかったという。

「(土居)聖真くんにボールが入った状況で2対2になって、中に入って最初は相手の前でクロスに触ろうと思ったんですけど、厳しいな、ということでファーサイドにちょっと逃げたんです。そうしたら聖真くんが浮き球でパスを出してくれて、合わせるだけでした」

 土居の高すぎず低すぎない絶妙のクロスは、ニアでクリアしようとした岩田智輝の頭上をぎりぎりで越えた。

「ボールの滞空時間が動画で見るより長く感じたんですけど、うまく決められて良かったです」

 ピッチの上ではそれだけスローモーションのように見えたということなのだろう。集中力が研ぎ澄まされていた証拠ではないだろうか。

 この日は前線で上田綺世が左右に動き、荒木は縦関係になって上田の動きを見ながら近づいたり、あるいは空いたポジションを突いていったりした。

「フォワードが(上田)綺世くんになってから、綺世くんを警戒して釣られる選手が多くなっていました。そこで自分が空いてくるかな、と今日は思っていて、ちょうどよく自分が空いて点を取ることができました。綺世くんとは非常にいい関係ができていると思っています」

 荒木の長所は、こうやって上田とも合わせられるし、エヴェラウドがパートナーでもうまく生かし合うことができることだ。その柔軟性は、熟練の選手のよう。

 これで単独でチームのトップスコアラーとなり、2ケタ得点までは、あと1だ。名古屋グランパスとルヴァンカップ準々決勝をホーム・アンド・アウェーで戦ったあと、次のリーグ戦は9月11日の第28節、ホームでのアビスパ福岡戦。前回対戦は0-1で敗れていて、荒木は前半のみでピッチを退いている。成長した姿を、10ゴール目で示したい。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE