浦和レッズがリーグ3連勝と復調してきた。8月25日の明治安田生命J1リーグ第26節、サンフレッチェ広島戦で苦しみながらも1-0の勝利をもぎ取った。最終ラインを3人で守る形を採用して、クリーンシートで終えた充実感を、その3バックのセンターを務めた槙野智章は感じていた。

上写真=槙野智章はこの試合のために準備した3バックシステムをコントロール。今季13試合目の無失点試合に導いた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年8月25日 明治安田生命J1リーグ第26節(@浦和駒場/観衆4,425人)
浦和 1-0 広島
得点者:(浦)キャスパー・ユンカー

「あとはもう割り切って守るだけでした」

 8月26日のサンフレッチェ広島戦に向けて、浦和レッズの先発メンバーが発表されたとき、多くの人がどんな布陣で臨むのか予想するのを楽しんだのではないだろうか。実際にピッチに並んだのは、3バックとも4バックとも見える立ち位置。広島の攻撃の形によって柔軟にバランスを変えるようだった。

 槙野智章が説明する。

「今季は3バックの相手に対してボールを持たれて、勝ち点を取りこぼしている試合がありました。徳島戦が終わって広島戦までの間に、新しいシステムで(最終ラインが)3枚の形を練習してきてすごく手応えがありました。初めてやる選手の並びやシステムでしたが、難なくやれたかなと思っています」

 右から岩波拓也、槙野、アレキサンダー・ショルツが最終ラインに並ぶが、広島のウイングバックの立ち位置によって、右の酒井宏樹が下がって4バックに近い形になったり、左の関根貴大がサポートに入ったりする。広島のシャドーが下がってもらおうとすれば、岩波やショルツが前に出て奪いにいくケースもあれば、平野佑一や伊藤敦樹のボランチに任せてつぶすときもある。3バックベースだが、3バックにこだわるわけではない、というイメージだろうか。

「いい形で前半に点が取れたので、あとはもう割り切って守るだけでした」と槙野が付け加えたように、15分にキャスパー・ユンカーが決めたことで、じっくりと腰を据えた戦いを選択することができたのも大きい。

 3バックのセンターに立つ槙野としては、ジュニオール・サントス、54分からはドウグラス・ヴィエイラと広島の強烈な1トップを見張りつつ、岩波、ショルツの動きに連動しながら周囲を動かすのが主なタスク。88分には関根に変えて宇賀神友弥が左サイドに入り、最終ラインを5枚にしてしっかりと攻撃をストップ、最後まで集中して守りきった。

 攻撃でも最終ラインからのビルドアップの中で、芝生の上を低く滑るようなシュート性のキックでユンカーや明本の足元に一気に送り込み、広島が前がかりになれば、今度は空いた裏のスペースに2人を走らせるなど、変化もお手の物だった。

 そんな最終ラインは、この夏に酒井とショルツが加わって明らかに新しい力になっている。堅守がさらに堅守に。26試合で26失点はリーグでは8番目に少ないが、1試合に1ゴールを許しているのも事実。半分の13試合はクリーンシートだから、この数を増やしていきたい。

「一人ひとりの長所を生かした守り方ができているのかなと思います。ディフェンスとして大事なチャレンジ・アンド・カバーもありますが、一人ひとりの対人の強さを生かして、1対1の局面でチャレンジするボールの奪い方ができているのはいいことだと思います」

 組織で守る距離感と、その前提としての個の強さの両方に確かな手応えを感じている。それをピッチの上での濃密なコミュニケーションでさらにパワーアップさせて、目標の3位以内に一歩一歩進んでいくつもりだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE