横浜F・マリノスが絶好調だ。11試合負けなしで、そのうち引き分けも2つだけ。首位を快走する川崎フロンターレと6ポイント差で、ついに背中が見えてきた。仲川輝人も一役買っていて、春の負傷から復帰して夏にコンディションを上げ、秋への大収穫に備える。その原動力は何より「楽しむ」ことだ。

上写真=仲川輝人は大分戦で、見事なすり抜けとセンタリングで先制ゴールをお膳立て(写真◎J.LEAGUE)

「いろいろ考えて出したのがマリノスでやりたいという答え」

 夏に入って出場時間を伸ばし、「感覚は自分としてはいいかなと思っています」と話すのは、仲川輝人。高速アタッカーが手応えを得ているのも、ゴールに近いところで仕事をできている実感があるからだという。例えば、8月15日のJ1第24節大分トリニータ戦、30分の先制ゴールのアシストだ。

 右サイドでボールを縦に横にと動かしながら少しずつ穴を開け、岩田智輝のワンタッチパスを受けて仲川が右サイドの裏のスペースを取った。センタリング、と思わせておいてもう一つ持って相手のスライディングを無力化してから、ゴールラインぎりぎりのところで中央へ。これを前田大然が合わせた。相手の動きを見切った技術的、かつ精神的な余裕と、力を込めて送ったラストパスが、その好調ぶりを雄弁に語っていた。

「徐々にですけど、得点に絡む機会が多くなっているのはありますね」と言うが、そうなればゴールそのものへの期待は高まる。今季は春に右ハムストリング肉離れの影響で戦線を離れた時期もあって、いまだノーゴールなのだ。韋駄天ドリブラーにしては珍しい。

「あまり焦らないで自分のペースでやりたいですね」というのが、仲川の本音。「取れるときは取れるので」という自然体の自信がそう言わせる。その前兆として「ゴールに迫っている」ことを示すアシストだったというわけだ。

 この夏にはヴィッセル神戸への移籍も取り沙汰されたが、愛着のあるトリコロールのユニフォームを着続けることを決意した。「自分の願いは優勝しかない。リーグ戦もルヴァンカップ天皇杯もそうだし、あとはACL(AFCチャンピオンズリーグ)ですよね。ACLでチャンピオンになりたい。それはこのクラブで成し遂げたいことです」が最たる理由だった。

 そして、もう一つ。

「ここでサッカーをやっていて、楽しいということを一番感じられるので、その中で毎試合出るという目標、そこで結果を出す目標をやっていかないといけない。マリノスのアタッキングフットボールは自分の中で魅力的だし、他の皆さんが見ていても魅力的だと思います。自分が楽しんでやれるかどうか、夏にいろいろ考えて出したのがマリノスでやりたいという答えでした」

 ファン・サポーターは、「横浜FMのサッカーを思い切り楽しんでいる仲川を見る楽しみ」を存分に味わうことができるのだ。