上写真=好セーブを連発して勝ち点1をもたらした柏のGKキム・スンギュ(写真◎J.LEAGUE)
■2021年8月14日 明治安田生命J1リーグ第24節(@三協F柏/観衆3,931人)
柏 0-0 川崎F
得点:なし
・柏メンバー:GKキム・スンギュ、DF高橋峻希、エメルソン・サントス、上島拓巳、古賀太陽、三丸拡、MFクリスティアーノ、ヒシャルジソン、椎橋慧也(60分:戸嶋祥郎)、FW武藤雄樹(66分:高橋祐治)、ペドロ・ハウル(85分:瀬川祐輔)
・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、登里享平(85分:車屋紳太郎)、MFジョアン・シミッチ、脇坂泰斗(77分:橘田健人)、旗手怜央(77分:遠野大弥)、FW家長昭博、レアンドロ・ダミアン(85分:小林悠)、長谷川竜也(58分:宮城天)
今季初めて川崎Fが無得点に終わる
互いに仕切り直しとなったリーグ再開初戦に勝利して迎えたこの日の試合。開始直後に流れを手にしたのはホームの柏だ。守備の局面で前進と退却の判断が素晴らしく、ネルシーニョ監督の信条たる「いい守備からいい攻撃」が機能する。
プレッシャーをかけては相手のボールを奪い取り、ウイングバックの三丸とシャドーの武藤が絡む左サイドからの攻撃と、1トップのペドロ・ハウルに預けてから展開する重層的な攻撃が機能し、川崎Fゴールに迫った。7分には三丸のクロスからペドロ・ハウルがヘッドで狙うなど好機をつかんだが、20分過ぎまでの攻勢の時間帯にゴールをこじ開けることができなかった。
対する川崎Fも柏の攻撃をやり過ごした後は、徐々に自分たちのリズムを作り出す。柏のシャドーに入った武藤に張り付かれてシミッチが消されると、最終ラインからのボールの循環ルートに変化を加え、さらに前線が流動的にポジションを変えることで的を絞らせない攻めを展開。しかし川崎Fもネットを揺らすまでには至らず、0-0のまま、後半に折り返す。
後半も、開始からいい形を作ったのは柏だった。47分に左サイドから三丸が入れた速いクロスにペドロ・ハウルが反応。ミートできなかったものの、あわやのシーンを生み出した。一方の川崎Fも3バック+2ウイングバックの5バックを敷く柏に手を焼きつつも、細かいパス交換と左右の揺さぶりで攻撃を仕掛けていく。それでもネットは揺れなかったが、61分に柏のCB上島が旗手に危険なファウルをおかし、この日2度目の警告を受けて退場。川崎Fが数的優位の状況になった。
そこからは川崎Fの攻撃を柏がしのぐ展開になっていく。キム・スンギュが好守で何とか失点を免れ、速攻とセットプレーで1点を取りにいく柏。一方で積極的にボールを動かし、宮城の仕掛けを絡めながらゴールを目指す川崎F。88分には橘田のシュートをキム・スンギュが右手一本ではじき出すビッグセーブも飛び出したが、結局最後まで得点は生まれず。スコアレスドローで試合は決着した。
「前半からわれわれが準備した通りに良い試合ができていたと思います。無失点で抑えていれば、勝利につながると思ってプレーしていましたが、残念ながら後半一人退場してしまって難しい試合になりました。ですが、最後まで耐えきって勝ち点1を取れたのは価値があることだと思っています。首位の川崎相手に無失点で終われたのは意味のある試合になったと思います」
再三の好セーブでチームを救った柏の守護神キム・スンギュは準備したものをしっかり出せたと試合を振り返った。ネルシーニョ監督も「攻守にバランスよく入れた。非常にオーガナイズできた試合だった」とコメントした。首位を快走する川崎Fが無失点に終わったのは、今季初。昨季の28節・大分戦以来のことだった。川崎Fの鬼木達監督は「アグレッシブさが足りなかった。選手はよくやってくれたが、得点にこだわってやっているので、後半は一人多い状況でもあり、決めたかった」と悔やしさをにじませ、次に向けてしっかり修正したいと話した。
柏が中断期間に重点を置いて整備・確認した守備は前節に続き、この日もしっかりと機能した。一人少ない状況になって4-4-1にチェンジしたあと、すぐにCBの高橋祐治を投入して5-3-1にシフト。不測の事態にも人が入れ替わっても、守備意識は保たれた。この日、両チームとも手にしたのは勝ち点1だったが、キム・スンギュが言う通り、柏にとってより大きい1ポイントになっただろう。
取材◎佐藤景