松田直樹さんが急性心筋梗塞のため2011年8月4日に急逝されてから、今日、2021年8月4日で10年になる。この節目に、松田さんの存在やサッカーへの愛、そして命の大切さをつないでいくために、横浜F・マリノスは改めて「クラブが継承すべきスピリット」として指針を発表した。

上写真=松田直樹さんが逝去されて10年。次の世代に命の大切さをつないでいかなければならない(写真◎J.LEAGUE)

「マツさんが生きていたら何をしているだろうか」

 松田直樹さんが旅立たれてから、もう10年。まだ10年。いまでも、その存在感がサッカー界に残しているものは大きい。

 横浜F・マリノスで偉大な先輩とともに戦った栗原勇蔵さん(横浜FMクラブシップ・キャプテン)は、いまでも松田さんの存在を思い出し、刺激を受けているという。「何がすごかったかというと、存在感。いまでもそれを超える存在はいないと思う」「すべてにおいて大胆で、すべてにおいてすごい人だと感じます。亡くなってからAEDを普及させたのは間違いないし、それで助かった命はものすごく多いと思います」「亡くなっても世の中に貢献する姿は頼もしい」「たまに、マツさんが生きていたら何をしているだろうかと考えることがあります。生きていたらやってくれたと思うことを、自分が少しでもできるようにやっていきたい」と、色あせない思いを次々に口にした。

 松田さんが16年も在籍した横浜FMでは、横浜マリノス株式会社の黒澤良二代表取締役社長が、彼の存在やサッカーへの情熱、そして命の大切さをすべて含めて「その魂はクラブが継承すべきスピリット」として改めて宣言。次の世代にしっかりと引き継ぐ強い意志を込めて、この節目にクラブとしての指針を発表した。

 一つが「松田直樹さんにフォーカスした発信や取り組み」。背番号3のユニフォームのベンチへの掲出やSNS等を通じたメッセージの発信、8月4日に近いホームゲームにおける記帳台の設置など、従来の取り組みを継続することを強調した。

 もう一つが、Jリーグ全体のシャレン!活動の取り組みとして広がっている「#命つなぐアクション」。これは2019年に横浜FMから始まったもので、スポーツ中の突然死ゼロを目指していく。その点では、横浜FMアンバサダーの波戸康広さんが「AEDの普及はこの10年で進んで、助かった命がたくさんあったと思います。松田さんのことは悲劇でしたが、彼のような悲劇を二度と起こさないことで命をつなぐ大切さ、その啓発活動をしながらやってきたことを今後も続けることが大切です」と訴えた通りだ。

 横浜FMでは、皆さんのツイッターアカウントからハッシュタグ「#FOREVER3」をつけて松田さんへの思いを投稿してもらうオンライン記帳を、8月4日23時59分まで募集。また、背番号3の1stユニフォームとプレーヤーズTシャツを初めて販売することになった。松田さんの偉大な足跡を伝え、思いをつなぐ取り組みの一つとなる。売上の利益全額は、ホームタウンにおけるCPR(心肺蘇生法)・AEDの普及啓発事業としてクラブが実施する「#命つなぐアクション」および、ホームタウンの子どもたちへのサッカー普及活動などの活動費用に充てられる。

 松田直樹さんのお姉様で、一般社団法人松田直樹メモリアルNextGeneration の松田真紀理事はこの10年を「感謝」の一言で表現した。

「松田直樹をずっと思っていただけることは、感謝しかありません。ファン・サポーターの皆さんにも10年という思い、悲しみはそれぞれだと思いますが、この先を見たときに、この活動で子どもたちが安心安全な環境でサッカーを楽しんでいけるように、そんなところを伝えていって、悲しみよりもそういう思いで進んでいければと思っています」