武藤雄樹が「一からのチャレンジ」に意欲満々だ。浦和レッズをシーズン途中に飛び出して柏レイソルに完全移籍。32歳の夏に並々ならぬ決意を下したアタッカーが7月23日、オンラインで移籍会見に臨んだ。プロ3クラブ目となる柏で目指す「なりたい自分」とは。

上写真=武藤雄樹は移籍会見が行われた7月23日に初めて合流。「しっかり結果で存在を証明しないといけない」(写真◎スクリーンショット)

「歯車がかみ合うようなプレーをしたい」

 2011年にベガルタ仙台でプロになり、4シーズン戦い抜いたあと、浦和レッズに引き抜かれてから6シーズン半を過ごした。そしてこの夏、武藤雄樹は3つ目のクラブとなる柏レイソルへの移籍を決めた。

「自分の置かれている状況やいろいろ踏まえた上で、新しい環境でさらなる成長のために頑張りたいと思った中で、柏レイソルが必要と言ってくれてオファーをくれました」

 浦和では今季、16試合に出場して先発が10試合と悪くはなかったが、柏の熱心なオファーを受け入れた。

 背番号は19だ。仙台時代に背負ったナンバーで、浦和1年目もこの番号をつけてリーグ13得点のキャリアハイをマーク。翌年に9になったから、いわば武藤にとっての出世番号になる。

「仙台や浦和でつけたこともそうですし、他にも候補はあったんですけど縁のある19で、浦和でも19をつけて飛躍できた思い入れのある番号です。また一からのスタートということで、19番をつけて印象に残るプレーを出していけたらいいと思っています」

 32歳での「一からのスタート」という表現に特別な意欲がにじむ。仙台時代に席巻したキレキレのクイックネスを、浦和でさらに戦術的に巧みに利用して花開き、AFCチャンピオンズリーグを頂点に多くのタイトルを獲得、円熟味を増してきた。次のステップに選んだ柏の地では、どんな自分に巡り合うことを自分に期待しているのだろうか。

「若いときに比べるといまは大人のプレーができるようになってきたと思います。いろいろなことを経験をした上で、いまなにが必要かというプレーの選択ができるようになったと感じています。この年齢ですので、そういうところをチームにプラスになるようにプレーしたいと思っています」

 と、ここまでは前段。「でも」でつないだ言葉に本音を載せた。

「でも逆に、若いときのような強引さや貪欲さを柏では見せたいと思っているんです。一からのチャレンジという意味でも、もう一度、というところを見せたいと思います」

 いわば自分への再挑戦だ。相手が嫌がる場所に立って一度ボールを引き出しておいて、そこから預けてもっと嫌な空間にもぐり込んでいくのが武藤の最大の魅力。

「攻撃の部分でリズムを作り出せると思っています。柏は順位では難しい位置にいると思うし、満足いく結果を出せていませんが、歯車がかみ合うようなプレーをしたいですね。ゴールで勝利に貢献しなければいけないと思っています」

 再開初戦は8月9日のヴィッセル神戸戦。そこまでに少しでも相互理解を深めたい。

「一番は僕がポジショニングをしっかり取ることで、その次に周りの選手にどれだけ見てもらえるか。それが受ける上でポイントになってくると思います。練習の中からこういうところで受けたい、どんどんつけてほしいということは言おうと思っていますし、信頼をつかまなければボールは来ないと思うので、1日1日を大切にして、みんながボールをつけたくなるような存在感を出せればいいと思っています」

 後半戦、柏の15位からの逆襲は、背番号19に特別な思いを込めるこの男から始めなければならない。