川崎フロンターレが長く苦しいシーズン前半戦を無敗で終えた。驚異的な結果を残したチームを主将として引っ張った谷口彰悟が振り返ったのが、底力と意地とプライドだ。全冠制覇の目標達成へ向けて、一休みしてまた堂々と挑んでいく。

上写真=谷口彰悟が前半戦を総括。悪条件も言い訳にしたくないという強い思いを口にした(写真◎J.LEAGUE)

■2021年7月21日 天皇杯3回戦(@フクアリ/観衆4,553人)
川崎F 1-1(PK4-3)千葉
得点者:(川)家長昭博
    (千)見木友哉

「どんな形であれ次に進むことがすべて」

 長く苦しいシーズン前半戦だった。川崎フロンターレは2月の開幕から連戦続き、ACLでは中2日の6連戦を全勝し、帰国しても厳しい行動制限の下で新型コロナウイルス陽性診断もチームから出て、ようやくたどり着いた前半戦ラストマッチ。谷口彰悟は「そういうことは言い訳にしたくなかった」と力強く語った。

 7月21日、ジェフユナイテッド千葉との天皇杯3回戦。谷口の言葉を借りれば「内容は改善しなければいけないポイントだらけ」だったが、この大会はトーナメントだから勝てばいい。53分に先制されながら6分後に追いついて、そのままPK戦にまでもつれ込み、最後は4-3で勝ちきって4回戦進出を決めた。

「予想通り、簡単にはならない試合でした。先行されて苦しいゲームだったのは間違いないですが、天皇杯はこういう戦いというか、どんな形であれ次に進むことがすべてなので、同点に追いついたあとも最後までみんなで延長戦、PK戦を見据えて戦えました。中断前の最後のゲームになりましたけど、苦しかったりきつかったり痛めている選手もいる中で、やれることを出しきろうというゲームでした。そういう意味を含めて、次に進めるのは素晴らしかったと思います」

 自分たちに抱く誇りを強く再確認できるゲームになった。そして「次に進むのが絶対なのでできてホッとしています」と本音も漏れる。

 悪条件が重なった。でも、倒れず戦い抜くことを誓った。キャプテンとしては、スタッフ2人と選手1人の陽性者に対して「安心してもらいたい、結果を残すことで良かったとホッとしてもらいたい、そういう気持ちも含めて勝ちたかったので、一丸となって戦い抜いた結果」と特別な思いを込めた。

「そういった中でも、まだまだ戦える底力があると見せようと話していて、最後の意地ではないですけど、プライドを持って戦ったつもりですし、そこは言い訳にしたくなかったのが一番にありました。内容はひどいゲームだったかもしれないけど、何が何でも、という気持ちは見せられたかなと思っています」

 技術や戦術はもちろんのことだが、強い川崎フロンターレが「もっと強い川崎フロンターレ」になるためにこの前半戦で手に入れたものは、苦しさに負けない底力と意地とプライドだったのではないだろうか。それが全冠制覇への最大の武器になる。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE