7月21日に行われた天皇杯3回戦で、川崎フロンターレはジェフユナイテッド千葉に追い詰められながら、1-1からのPK戦で何とか4回戦進出を決めた。苦労の連続だったシーズン前半戦も、これでようやく小休止。公式戦無敗でここまで戦い抜いた選手たちに、鬼木達監督はただただ感謝するのだった。

上写真=鬼木達監督はここまで公式戦無敗に導いた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年7月21日 天皇杯3回戦(@フクアリ/観衆4,553人)
川崎F 1-1(PK4-3)千葉
得点者:(川)家長昭博
    (千)見木友哉

「助け合いながらできているからいまがあります」

 川崎フロンターレにようやく休息のときが訪れる。7月21日の天皇杯3回戦でジェフユナイテッド千葉の集中守備にあい、53分に先制ゴールを許す展開。それでも59分に家長昭博がPKを決めてすぐさま追いついた。結局、天皇杯では2回戦に続いてPK戦まで戦って、なんとか4-3で逃げ切りに成功した。これでやっと、中断期間を迎えることができる。

 苦しかったこれまでの思いを絞り出すように、でも過剰になることを控えて、鬼木達監督は明かした。

「まだ負けなしと、ここまでの成績を出せるとは思っていませんでした。でも、やれないと自信をなくすこともありませんでした。この選手たちだったら、という思いもありました。想像以上にタフな戦いが続いていますけど、勝ちながら成長しようと言ってきたことをまさに現実にしてくれていると思います」

「皆さんにわかっていただきたいのは、ACLから隔離生活を続けてきて、本当に言葉では表せないぐらいいろんなつらい状況で、バブルの中でもコロナの陽性者が出たり、伝わらないことが多いと思いますけど、今日も120分プラスPKで勝つというその姿は本当にすごいことだと思います。選手には感謝しています」

 これまでどんなに超過密日程にあっても、ケガ人が出ても「すべてのことを力に変えていこう」と選手にもスタッフにもクラブにも呼びかけてきた。J1リーグ18勝4分け、ACL6勝、天皇杯2分け(ともにPK戦で勝ち抜き)という結果で、本当に実現させた。その偉業と言ってもいい戦いの裏では、言葉にできない思いがあった。ようやく、この中断期間で心身とも休ませることができる。

 特にACLからの帰国後は、バブルの中で厳しい行動制限を遵守してきたにもかかわらず、スタッフ2人と選手1人に新型コロナウイルスの陽性診断が出るという困難に見舞われた。どう立ち向かっていくのか、難しい決断の連続に迫られた。

「(感染者に)電話をするたびに『すみません』、練習中止にならざるを得ないときも『申し訳ないです』ということを言ってもらって、それを言わせたくないのにそうなってしまうコロナというのは本当に憎いと感じています。でも、チームみんなで支え合いながら、助け合いながらできているからいまがあります。負けずに立ち向かっていければと思っています」

 8月もリーグ戦と天皇杯で6試合が待っていて、9月にも同じくリーグ戦とルヴァンカップで6試合が決まっている上に、いまのところ9月14日か15日にACLのラウンド16が一発勝負で組み込まれる予定にもなっている。そこで再び勝ち続けるために、いまはとにかく十分な休息とコンディション調整に集中していく。

 そして鬼木監督自身も「やっとホッとできるタイミングなのかな」と優しい表情になった。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE