6月27日に浦和レッズがアビスパ福岡を迎えた明治安田生命J1リーグ第20節。1-0で浦和がリードしたあとは福岡も攻勢に出たが、その勢いを削ぐことができたのは明本考浩の追加点があったから。サイドバックにコンバートされて生き生きとピッチを駆け回っている。

上写真=明本考浩(15)が追加点を挙げてこの笑顔。勝利をたぐり寄せた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年6月27日 明治安田生命J1リーグ第20節(@埼玉/観衆4,724人)
浦和 2-0 福岡
得点:(浦)小泉佳穂、明本考浩

「サイドバックだと守備に重心を置いている」

 速い。強い。スタミナがあってスプリントを厭わず、なにより前向きなキャラクターが最後まで戦い抜く源になっている。左サイドバックにコンバートされた明本考浩は、先日加入が発表された酒井宏樹と同じような特性を備えていて、新しい強化型サイドバックの未来が開けているように見える。

 J1第20節のアビスパ福岡戦で、面白いように決まったのが右サイドから明本に送り込まれるサイドチェンジのパス。右サイドで作っている間に逆サイドのオープンスペースに進入し、ボールを受ければ遠慮なくスピードアップして何度もチャンスを作った。

 38分のシーンはその最たるもの。伊藤敦樹が右サイドで蹴り込んだストレート系の最高のサイドチェンジのパスを収めると、ニアに入ってきたキャスパー・ユンカーにぴたりと届ける高速のセンタリング。合わせたフィニッシュは相手に当たってゴールにはならなかったが、明本のキックのスピード感は自信にあふれていた。

 ただやっぱり、これまでのFWやMFと違って、意識は守備重視。

「手応えはいい感じですけど、サイドバックだと守備に重心を置いているので、やられないことを意識しています。特に対峙した(ジョルディ・)クルークス選手は前回もいいプレーをしていたので、やられないということしか意識していませんでした」

 さらにはその後ろからエミル・サロモンソンも飛び出してくる2段アタックが福岡の強み。警戒心はより高まっていた。

「本当に福岡さんのストロングポイントだったと思うので、試合前からクロスを上げさせないように近い距離にいくことを意識していました。トモ(左サイドハーフの大久保智明)ともいい連係が取れていたので、クロスの回数もあまりなかったかな。抑えられてよかったと思っています」

 しかも、きっちり守った上に、試合を決めてみせるのだから、頼もしい。76分に汰木康也からの左CKをニアに入ってヘッドで流し、ゴール右に送り込んだ。

「中の入りは決まっていましたし、練習からニアに行っていたのでうまくボールが来て合わせることができてよかったと思います」

 今季リーグ2点目が貴重な追加点になった。

「空間認知というところは優れていると思っています。小さい分、予測が大事だし、飛ぶタイミングも身についてきて、それが発揮できていると思っています」

 努力と感覚が生み出したゴールを自信に変えて、右肩上がりのチームとともに新しいサイドバック道を歩んでいく。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE