川崎フロンターレは日本代表とU-24日本代表に計5人を送り込みながら、彼らを欠いた6月2日の明治安田生命J1リーグ第21節・横浜FC戦で安定の勝利を収めた。代表選手たちが刺激を受ける中、鬼木達監督もまた刺激を集めてチーム作りに生かしていく。

上写真=鬼木達監督も選手と同じように日本代表からの刺激を取り込み、さらに強いチームを築いていく(写真◎J.LEAGUE)

「競争の中でいいと思った選手がメンバーに入っていく」

 川崎フロンターレの鬼木達監督は「チーム全員が代表に入るようなチームに」という考えの持ち主だ。多くの選手が日本代表やU-24日本代表に選ばれることをいつも大歓迎している。だからいま、日本代表に谷口彰悟と山根視来が、U-24日本代表に三笘薫、旗手怜央、田中碧が選ばれて、主力5人を欠いて公式戦に臨むに当たっても、「うちには選手がたくさんいますから」と、むしろ選手層アップの作業を楽しんでいる。

 代表選手たちには刺激を受けてチームに歓迎してほしい、と話すが、鬼木監督自身も刺激をもらったようだ。U-24日本代表がU-24ガーナ代表を下した6月5日の親善試合のあと、オーバーエイジで加わった吉田麻也が田中についてこんな風に話していた。

「怖がらずにボールを受けることができて、前につけることもできます。いつも言っていますけど、常に顔を出すのはボランチには絶対条件で必要なことです」

 ポテンシャルの高さを感じた上で、伸びしろの部分にも言及した。

「前につける質にもっとこだわらなければいけないですね。フロンターレではほとんどの試合で勝っていると思うので、リードしてコントロールする時間が長いと思います。勝ち慣れているから、負けているときにどういうプレーが効果的にできるかというのを見たいですね」

 これを伝え聞いた鬼木監督は、「そう指摘してくれたのは、碧にとって成長できる部分のコメントだと思います」と大歓迎だった。

「自分たちのゲームでも、なかなか奪えなかったり、奪ったあとに失うことも碧に限らず多く見られますから、自分もそういう目で見ていきたいと思いますし、楽しみにしたいですね」

 もちろん、「負けている状態のフロンターレ」をわざわざ作ることはしないが、奪ったあとの選択や技術にこだわるのは鬼木監督の姿勢でもある。田中自身も、例えば5月22日の第15節横浜FC戦のあとに「プレーのレベルの低さに自分でもがっかりしている」「シンプルに技術ミスです。見えている中でのミス」と猛烈に反省していた部分だ。

 その田中ら5人を欠いた6月2日の第21節は横浜FCに2-0で勝利。同様の陣容で9日の天皇杯2回戦、AC長野パルセイロ戦に臨む。

「いままでと何も変わらないですね。目の前の1試合に対して勝つためにどうしたらいいのかを考えて選手の選考もしますし、競争の中でいいと思った選手がメンバーに入っていくことになります」

 鬼木監督はいつものスタンスを変えるつもりはない。第21節の横浜FC戦では家長昭博、小林悠、登里享平らが引っ張った。車屋紳太郎、長谷川竜也、脇坂泰斗らが自分の良さを最大限にチームに落とし込んだ。イサカ・ゼインもプロデビューしたし、橘田健人も先発でさらに経験を積んだ。負傷していた大島僚太、山村和也も練習に戻ってきた。そして6月27日からはウズベキスタンでAFCチャンピオンズリーグが始まる。天皇杯はその前の最後のゲームになる。

「ここからACLに向けてにもなりますが、その前の公式戦は天皇杯が最後になるので、しっかりとチームでやるべきことを全員でやっていきたいと思います」

 ジャイアントキリングを狙う相手をしっかりとたたいて、威風堂々とアジアに出ていく。