上写真＝決勝点を決めた小林悠（写真◎J.LEAGUE）
■2021年5月30日 明治安田生命J1リーグ第17節（＠等々力陸/観衆4,958人）
川崎F 2-1 鹿島
得点:（川）レアンドロ・ダミアン、小林悠
（鹿）上田綺世
苦しいときに決めるのは自分だと
クロスを上げた長谷川竜也も、ゴール前で相手CBと競り合った知念慶も、ゴールを生むために力を尽くしたが、主役はゴールを決めた小林悠だ。
舞台に上がったのは、90＋3分。ネットを揺らしたのが、90＋4分。ひと振りで、主役に躍り出た。登場からゴールを決めるまで1分あまりの出来事だった。
左サイドでボールを持った長谷川がクロスを上げた瞬間、ゴール右にポジションを取った。中央で知念が相手CBの町田浩樹と空中で競り合う。ボールは待ち構えていた小林のもとに届き、胸トラップから左足を振って、ネットを揺らした。
ゴール正面のエアバトルで知念がボールに触っていたら、オフサイドだった。しかしVARで確認すると、町田だけが触れていた。引きの強さもまた、主役を務めるにふさわしい。
「オニさん（鬼木達監督）が、ピッチに送り出すときに、タツヤ（長谷川）にクロスを上げさせるから知念の後ろに入ってくれと言われていました。オニさんの狙い通りです。あの時間帯であの場面では、選択肢がシュートしかない。迷わずに振ることができました。勝負強さ？ 自分でも正直分かっていないですが、等々力の力であったり、フロンターレのサポーターみなさんが、自分に決めさせてくれるのかなと感じています」
小林にとっては今季7点目。先発は7試合で途中出場は10試合。プレー時間が653分であることを考えれば驚異の決定力と言える。センターフォワードのポジションを争うレアンドロ・ダミアンが今季は好調でその出番は限られている状況だ。ただし、出ればしっかり存在感を示してきた。「素晴らしい選手だと思う」とライバルであり、頼もしい仲間であるL・ダミアンの力を認めつつも、黙ってポジションを譲る気はない。
「自分もベテランという年齢に入って、自信がなくなりそうになるときもありますけど、ゴールを決めることで奮い立たせています。ゴールが自分が生きている証明というか。今日も時間は短かったですけど、自分なら決められるんじゃないかという感覚になった。こういう苦しい時に決めるのは自分だと思ってピッチに立てているのは、今まで決めてきたゴールのおかげかなと」
この日、等々力劇場の看板役者は、十八番の演目『ゴール』で観衆を魅了した。さすがの舞台度胸と存在感。これだけ好評価を博したのだから、これからもここ等々力で、小林悠は何度も主演を務めることになるだろう。