2021年5月26日、明治安田生命J1リーグ第16節が開催された。レモンガススタジアム平塚では、湘南ベルマーレと川崎フロンターレが対戦。開始直後からアグレッシブに戦う湘南が、後半早々に先制したものの、ゲーム終盤に終盤に追いつかれで、試合は1-1で決着。この結果は、川崎Fは開幕から19戦無敗というリーグ記録に並んだ。

上写真=熱く激しい攻防を繰り広げられた湘南対川崎F(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月26日 明治安田生命J1リーグ第16節(@レモンS/観衆4,947人)
湘南 1-1 川崎F
得点:(湘)山田直輝
   (川)レアンドロ・ダミアン

・湘南メンバー:GK谷晃生、DF舘幸希、石原広教、大野和成、MF畑大雅(64分:岡本拓也)、田中聡(64分:中村駿)、高橋諒(86分:古林将太)、池田昌生、山田直輝、FW町野修斗(64分:石原直樹)、ウェリントン

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、谷口彰悟、車屋紳太郎、旗手怜央、MFジョアン・シミッチ(64分:レアンドロ・ダミアン)、田中碧、脇坂泰斗(57分:橘田健人)、FW遠野大弥(57分:家長昭博)、小林悠(77分:ジェジエウ)、長谷川竜也(57分:三笘薫)

前後半のスタートで湘南がらしさを発揮

 試合開始から湘南は川崎Fのビルドアップをうまく阻み、リズムを作らせなかった。人にしっかり付きつつ、スペースにも気を配る守りが絶妙で、ボールを奪えば立ち位置を考えてパスをつないだ。

 30分過ぎからは川崎Fも素早いパス回しと走り切るプレーでペースを握り、ゴールに迫っていった。だが、湘南の集中は途切れることなく、とくに自陣ボックス付近ではタイトに守って自由を許さない。前半はスコアは動かず、0-0で終わった。

 迎えた後半もスタートから流れを引き寄せたのは湘南だった。ボールを奪ってはしっかり前方に人が走って、パスコースを生み出し、川崎Fにゴールに迫っていく。ゲームの流れが悪いと見た川崎Fの鬼木達監督はすぐに家長、三笘、橘田の交代を準備。タッチライン際の3人が集まってくる中、試合が動いた。決めたのは、湘南だ。

 56分、右からのクロスが合わずに左に流れたところを山田が拾って、高橋へ。さらに中央のウェリントンがゴールに背を向けながら収めて後方に落とすと走り込んできた池田がミドルシュート。ボールは相手DFに当たったが、こぼれ球をすかさず池田が狙う。シュートは一度、チョン・ソンリョンに弾かれたが、詰めていた山田がヘッドで押し込み、湘南が先制に成功した。

 前半は優位に試合を進めている時間帯にゴールを取れず、次第に川崎Fにペースを握られることになった。しかしハーフタイムを挟んで仕切り直した後半、湘南は立ち上がりからいい流れを作り出し、その時間帯にしっかりネットを揺らしてみせた。ゴールが決まった瞬間、浮嶋敏監督はベンチ前で大きなガッツポーズを作り、スタッフと喜び合っていた。ベンチの歓喜がこの1点の価値を示していた。

 失点直後に前述の3人を投入した川崎Fはその後も、L・ダミアンも入れるなど攻撃のギアを上げた。しかし湘南もタイトな守りを継続。川崎Fを追い詰めていった。ところが、である。目下、J1記録の23試合無敗を続ける川崎Fは強引にゴールをこじ開ける力を備えていた。ボックス内でCB舘を背負いながら山根からのパスを受けたL・ダミアンは、足元に届いたボールをトラップで頭上まで跳ね上げると、そのままバイシクルシュートを敢行。相手GK谷とってはインパクトの瞬間が見えないシュート。L・ダミアンが得意の形で同点ゴールを生み出した。

 勝利まであと一歩と近づきながらも終盤に追いつかれた湘南は、それでも下を向くことなく、その後もウェリントンや山田がゴールに迫り、ファイティングポーズを取り続けた。一方で川崎Fも同点で終わるわけにはいかないと、三笘、家長、L・ダミアンがゴールを目指した。アディショナルタイムの4分間も互いに攻め合う激しい展開。結局試合は1-1で決着したが、見る者を熱くさせるウィークデーのナイトゲームになった。

「われわれのプレスが川崎相手にどれぐらい通じるのか。真価が問われるゲームだったと思いますし、前半から自分たちのやって来ていることをしっかり出していいゲームをしたと思います。後半、得点を含めて、途中どうしてもリードしたあとで少し引き気味になってピンチがある中で、失点してしまったんですが、そのあとも攻める姿勢を見せてくれた。勝ちたかったですけど、きょうのところは引き分けで、連敗を止めたというところで言うと、選手は非常によくやってと思います」

 狙い通りのアグレッシブなプレーで勝ち点を手にした湘南の浮嶋監督はそう振り返った。対して、最後に追いついた川崎Fの鬼木監督は自身の反省を口にしている。

「選手はスタートから意気込んでやってくれましたが、最初は難しい時間を過ごすことになりました。その中で徐々に自分たちの時間を増やせるようになったので、そこでもう少し大胆に攻撃したかった。あとは後半の入りのところで、もう一度相手が勢いを出す可能性があったので、選手交代を含めて自分の方でその可能性を消すマネジメントしなければいけなかった」

 連敗中だった湘南にとっては自信を取り戻し、無敗継続中の川崎Fにとってはいま一度を気を引き締め直す試合になった。その意味で、共に『価値のあるゲーム』だろう。等しく勝ち点1を分け合うことになったのも、当然だったのかもしれない。