5月20日に日本代表とU-24日本代表のメンバーが発表され、川崎フロンターレは合わせて5人が選ばれた。今回はクラブの公式戦に出られない期間が生じるため、鬼木達監督にとっては痛い問題かと思いきや、「これがチーム底上げのチャンス」と超プラス思考でさらにチームを強くするつもりだ。

上写真=鬼木達監督は5人の代表選出を素直に喜んだ(写真◎J.LEAGUE)

「ボリュームを増やしたい」

「チームとしては5人抜けるので考えなければいけないですが、欲を言えばもっと入ってほしい思いもあります」

 川崎フロンターレから日本代表に谷口彰悟と山根視来が、U-24日本代表には三笘薫、旗手怜央、田中碧と合計5人も選ばれた。今回の活動期間中にはJリーグ、天皇杯とクラブの公式戦も開催される変則的なスケジュールになったため、この5人は川崎Fの試合に一部、参加できなくなる。チーム編成に支障をきたすが、それでも鬼木達監督は「うれしさの方がありますね」とにこやかだ。

「極端な話、選手は全員が代表に入ってほしいと思ってトレーニングしていますし、ゲームに出ていなくても呼ばれるぐらいの選手になってほしいと思っているので、少しでも多く入ってほしい」

 そうなると、5人の代わりを誰が務めるかに注目が集まる。

「彼らが抜けた穴はみんなでカバーするというか、逆に言えばチャンスになる選手が多くいるので、全員で一段、底上げになるチャンスと思って挑みたいと思います」

 その点で、鬼木監督は常に「ボリュームを増やしたい」という表現を使う。チーム全体の戦力の厚みを増す作業のことだ。例えば、第14節の北海道コンサドーレ札幌戦では、今季新加入のMF小塚和季を初めて先発で起用した。

「どの選手にも言えるんですけど、ストロングもウイークもあって、それに対して自分がどこまで我慢できるかの基準があって、(小塚は)そこを超えてきてくれたのが試合に入るきっかけになりました」

 川崎Fの競争のレベルの高さは知られるが、鬼木監督の「基準」を超えることが最初のステップになる。小塚については特に「攻撃のところで随所にトレーニングから違いを見せていた」ことでクリアした。

 ただ、前半だけの起用になった。

「特に強度の高い札幌戦で、マンマーク気味にくるところで、何ができるか見てみたかったので、しっかりと自分の力でスタメンを勝ち取ってくれたと思います。ゲームの中のことでいうと、もっともっとやらなければいけないというか、彼らしい攻撃の違いを見せなければいけないわけです。今日もその話をしましたが、スタートでピッチに立たないと分からないものが分かったり、彼自身も自分自身も何が必要かがはっきりしたので、今後はそこをしっかりやっていってくれればいいと思っています」

 課題を可視化することで、実力は磨かれていく。同じようなサイクルが代表期間中に川崎Fで何度も行われるだろう。5人が抜けたことを最高のチャンスととらえる超プラス思考。鬼木監督のそのスタンスが、またこのチームを強くさせる。