川崎フロンターレのFW小林悠は北海道コンサドーレ札幌戦に途中出場し、アディショナルタイムにゴールを決めて勝利に貢献した。この試合でJ1通算300試合出場となったが、中村憲剛に次いでクラブ史上二人目となる記録を自らの得点と勝利で飾った。

上写真=小林悠は札幌戦でJ1通算300試合出場を達成した(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月16日 明治安田生命J1リーグ第14節(@等々力陸/観衆4,932人)
川崎F 2-0 札幌
得点:(川)三笘薫、小林悠

J1通算300試合出場を達成

 ピッチに登場したのは87分だった。残された時間はごくわずか。しかしながら、小林悠は見事に期待に応えてみせた。果敢にゴールを狙い、そしてネットを揺らしたのだ。

 アディショナルタイムに突入した90+4分のことだった。敵陣でボールを奪った田中碧が鋭い縦パスを送ると、オフサイドラインぎりぎりで飛び出してGKと1対1の状況を迎える。小林はGKの位置を確認しつつ、冷静に右足を振り抜いた。

 副審が旗を上げ、VARでオフサイドの確認がなされたが、しばしの静寂の後、高山啓義主審がゴールを認めた。刹那、等々力競技場が沸き、小林は両手をグッと握り締めた。

「(ピッチに入ったのは)ゴールを決めるか、時間を使うかというシーン。チャンスがあれば、試合を決められる1点になると思っていました。チャンスがあれば決めたいと思っていた」

 12日のベガルタ仙台戦では、2-1とリードしながらアディショナルタイムに追いつかれ、ドローに持ち込まれた。その反省を生かして臨んだ試合。1点のリードを守り切るか、突き放すかの場面でピッチに入った小林は、素晴らしい状況判断から相手の心を折る1点をスコアした。チームとしても仙台戦の教訓を生かしたゴールになった。

 敵将ペトロヴィッチ監督は「交代選手のところで差が出た」と試合を振り返ったが、田中しかり、小林しかり、途中出場した川崎Fの選手たちは一様にゲームの状況をしっかり把握し、力を発揮できる。それこそが現在の川崎Fの強みだろう。この日は5連戦の5試合目。ベンチから戦況を見つめていた小林は「疲れもあったと思うし、前に出ていく力が少なかった」と感じていたと話したが、「相手が前から来ているぶん、背後にスペースがあると思っていました」と冷静に戦況を見つめていた。「ボールを奪ったあとでスペースがありました。そこに(田中)碧が速いボールを入れてくれました。感謝したいです」。選手間で同じ絵を共有し、実践して生まれたゴールだった。

 札幌戦に勝利を収め、チームは昨シーズンから続く22戦無敗というリーグ新記録を樹立することにもなった。小林は「『いまフロンターレは強いな』と、自分のチームのことをそう言うのは変ですが、そう感じています。それは練習中から競争が激しくて、誰が試合に出るのか、誰がベンチに入るのか、監督も選ぶのが難しい状況があるからです。ただ勝っているから強いというのではなくて、チームとしての力がついてきたと、長くチームにいる中でも感じています」と、チームの現状について語った。12年目のシーズンを戦うストライカーの言葉は、説得力がある。

 自身にとってこの日の試合はJ1通算300試合出場のかかったゲームだった。小林はそんな記念すべき試合を、自らのゴールと勝利で飾ったが、先発でも途中出場でもチームのためにプレーする姿勢に変わりはない。「悠は、必ず結果を出してくれる選手です。結果を出してやろうという気迫がチームにエネルギーを与えてくれる。結果ももちろんなのですが、そういう姿勢がチームの若い選手を引っ張ってくれている。仮に結果が出なくても、そこは感謝しています。VARは、仮にフリーキックになっても、今日の彼らならしっかりとゲームを締めてくれたと思います」。鬼木達監督も、その働きに称賛を惜しまなかった。

 300試合出場は、むろん通過点。これからも小林悠はフロンターレのためにピッチを駆け、ネットを揺らし続ける。