5月12日、明治安田生命J1リーグの第20節でベガルタ仙台は首位の川崎フロンターレとのアウェーゲームに臨み、土壇場で2-2の引き分けに持ち込んだ。金星とはならなかったが、なかなかチャンスが巡ってこない選手たちの奮闘は特筆すべきだろう。チームの1点目を決めた中原彰吾も、今季リーグ戦では初先発だった。

上写真=74分に同点ゴールを決めた中原彰吾がこの笑顔。川崎Fを追い詰めるゴールだった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月12日 明治安田生命J1リーグ第20節(@等々力/観衆4,752人)
川崎F 2-2 仙台
得点:(川)小林悠、三笘薫
   (仙)中原彰吾、マルティノス

「横にサポートしていれば何か起こるかなと」

「チャンスがなかなかない中で、もらったときに結果を出さなければいけない立場にいるので、リーグで使ってもらったことで一人ひとりが何か結果を残そうという気持ちが出た試合だと思います」

 中原彰吾には意地があった。

 ベガルタ仙台が中2日という厳しいスケジュールで、首位を独走する川崎フロンターレとアウェーで戦う。しかも、前節から先発メンバーは8人が代わり、その8人の多くがここまで出場時間が限られたメンバーだった。

 その難しいミッションを、2-2のドローで切り抜けてみせた。勝つことはできなかったから、手放しで喜ぶことはできない。だが、「全体の底上げが果たされたのではないかと思います。今日のメンバーにしてよかった。フロンターレがなめてくれたのかな」と手倉森誠監督も冗談交じりで、起用した選手たちの奮闘を称えた。

 開始3分に先制される最悪のスタートになったが、4-4-2のブロックをコンパクトに、かつ高い位置で保って川崎Fのパスワークに食らいついた。うまく川崎Fの攻撃を封じていたから静かな時間帯が続いたが、74分にスコアを動かしたのは仙台だ。

 左から氣田亮真がするするとドリブルで前進し、相手3人を引き連れたまま強烈なシュートを放った。GK丹野研太がはじく。それが、中原彰吾の目の前へ。左足でていねいにゴールに流し込んだのだ。

「亮真がうまくドリブルしていって、横にサポートしていれば何か起こるかなと思っていました。いい位置にいてこぼれてきて、決められて良かったです」

 右サイドハーフとして先発して、相手の強力な左サイドの攻撃に対峙、後半からは右のボランチに入り、62分に松下佳貴が投入されると再び右サイドハーフに戻って、この場面では右サイドから中央に構えていた。

「ふかさないことだけ意識して蹴りました」と、GKが飛び出していて空いたゴールにパスするように送り込んだ。これで1-1の同点、83分には三笘薫に決められてやはり川崎F強しを見せつけられたのだが、90+5分にマルティノスが劇的な同点ゴールをぶち込んだ。

「川崎さんはうまくて、自分たちは引いて守ることが多かったんですけど、なんとか引き分けられてよかった」

 自らのゴールが勝ち点1の源になったが、笑顔はなかった。

「相手はうまく位置を変えながら回してくるのは分かっていたので、選手の入れ替わりと突破のところ、球際は意識してやっていました」

 2失点したものの、もぎ取った勝ち点1の意味は大きい。

「今日も軽い失点が2本続いているので、そういうものをなくせばゼロに抑えられると思います。そういうところを意識しながら、あとはフィニッシュをどれだけ増やせるか意識したい」

 次のチャンスにも、川崎F相手に見せた意地をぶつけるつもりだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE