前倒しで行われた5月12日の明治安田生命J1リーグ第20節で、首位の川崎フロンターレがベガルタ仙台を迎えた一戦。開始3分に小林悠の一発で川崎Fが難なく先制したものの、そこからミスが続出して珍しくテンポが出ない。中原彰吾のゴールで追いつかれたあとも三笘薫が決めて川崎Fは逃げ切りを図りたかったが、これで終わらなかった。90+5分にマルティノスのゴールで仙台が劇的に追いついた。

上写真=最後の最後に勝ち点1をもぎ取った仙台の選手たち。目の醒めるような同点弾を決めたマルティノス(右から2番目)も笑顔(写真◎J.LEAGUE)

■2021年5月12日 明治安田生命J1リーグ第20節(@等々力/観衆4,752人)
川崎F 2-2 仙台
得点:(川)小林悠、三笘薫
   (仙)中原彰吾、マルティノス

「大きな自信になる」と手倉森監督

 ベガルタ仙台が首位川崎フロンターレを追い詰めて、勝ち点1をもぎ取った。90+5分、ペナルティーエリアの外からマルティノスが渾身の左足シュートをゴール右にずばりと突き刺して、土壇場で2-2に追いついたのだ。

 前半開始早々の3分に登里享平のクロスを小林悠がヘッドで押し込んで、あっけなく川崎フロンターレが先制してからは、静かだった。

 もちろん、川崎Fのチャンスがなかったわけではない。先制したあとも立て続けにゴールを襲ったし、ほとんどの時間でボールを回し、奪われても即時奪回はいつも通り。しかし、ゴールを割れない。

 中2日のアウェーゲームで8人を入れ替えた仙台は、きれいな4-4-2のラインをセットした。川崎Fがボールを走らせて人を動かしても、仙台の選手はコンパクトな配置を維持して、セットされたエリアを愚直に守った。川崎Fが動かそうとした仙台の選手が、動かなかったのだ。後半も流れは変わらなかった。川崎Fが持つが、崩しきれない。

 74分に仙台が同点に追いついたあたりから、一気に動きが出ただろうか。氣田亮真がドリブルで持ち運んで3人に囲まれながらも強引にシュート、GK丹野研太がはじいたこぼれ球を中原彰吾がそのまま蹴り込んで、1-1にしたのだ。

 このあと、川崎Fは遠野大弥とともにエースのレアンドロ・ダミアンを投入、ゴールへの圧力を増していくと、83分には登里の縦パスで狭いエリアを抜け出した三笘薫が左足でゴール右へ流し込んで再びリード。さらには守備の要のジェジエウも85分に投入して、逃げ切りに万全を期した、はずだった。

 仙台も負けじと、リードされた4分後にマルティノスを投入。これが当たった。照山颯人のパスを受けたマルティノスが迷いなく左足を振り抜いた。

「王者川崎から取った勝ち点1は大きな自信になる」と仙台の手倉森誠監督。「いつもよりテンポの落ちたフロンターレのサッカーと、らしくないミスに助けられました」としながらも、「僅差のゲームを進めた中で何か起こせるのではないか」として最後までチャンスをうかがう姿勢が実を結んだ格好だ。

 そのミスについては、川崎Fの鬼木達監督は「自分たちのサッカーに程遠いミスが多くあった」「自滅に近いミスが多かった」と表現した。「細かいボールの動かし方のところや相手の嫌なところに入っていかなかったということがあります」とも話して、ビルドアップの課題を口にした。川崎Fにとっては、珍しくこんな日もある、ということだろうか。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE