5月4日の明治安田生命J1リーグ第12節で名古屋グランパスは川崎フロンターレに挑み、しかし2-3で敗れた。連続首位決戦は名古屋の連敗に終わった。それでもこの日は稲垣祥の得意のミドルシュートからのゴールをきっかけに追い詰めてはみせた。この2試合で、稲垣と名古屋に見えたものとは。

上写真=追撃のゴールを決めて味方を鼓舞する稲垣祥。得意のミドルシュートをたたき込んだ(写真◎小山真司)

■2021年5月4日 明治安田生命J1リーグ第12節(@等々力/観衆4,954人)
川崎F 3-2 名古屋
得点:(川)ジェジエウ、山根視来、オウンゴール
   (名)稲垣祥、マテウス

「いまの僕たちの力を認識できた2試合」

 またしても稲垣祥がミドルシュートをたたき込んでみせた。73分、追撃のゴールだ。

 齋藤学が持ち込んでこぼれたセカンドボールを稲垣が拾って右へ、マテウスがキープする間に森下龍矢が長い距離をオーバーラップしてきてボールを受けると、ニアに突っ込んだ柿谷曜一朗をおとりに使ってマイナスに送り、稲垣が蹴り込んだ。齋藤、森下、柿谷は途中交代で送り込まれた選手。クリエイティビティを持ち寄って組み合わせた見事なゴールだった。

「もちろんあのパスをくれれば自分は決める自信はあるんですけど、そこまで行った森下選手のオーバーラップからのクロスを褒めてあげてほしいです。彼のあの推進力がいくつもチームにポジティブな要素として出ていましたし、以前に森下選手が出たときも素晴らしいプレーをしてくれました。彼のような勢いをもたらすプレーヤーがいるのは僕たちにとっても励みになるし、今後に明るい材料なのではないかと思います」

 3点のビハインドを負ってなりふりかまっていられなかったのも確かだ。そこに、森下のパワーがかみ合った。左ウイングでスタートしたマテウスが右に移っていたのも大きかった。左利きの特性を生かしてカットインからゴールを脅かすシーンが増えていた。川崎F相手に守備で対抗しながら3失点を食らったあとに、いわば川崎Fのテリトリーに乗り込む形でテクニックのある選手を動員して押し込んだことは、今後のよりどころになるかもしれない。

 それは、4-3-3に選手を配置した戦い方も同様だ。今季は基本的に4-2-3-1だったが、前回の川崎F戦で3点を失ったあとの30分から中盤を厚くするために移行した。それをこの試合ではスタートから採用した。

「守備のときでも基本的に自分か長澤選手が相手のアンカーを抑えに行くのを意識していました。攻撃のときには僕と長澤選手が前線に絡みながらということを意識して、今後に向けて一つのオプション、戦い方の引き出しにはなるのかなと思います」

 0-4と2-3。川崎Fとの2試合を通して見えたものはある。

「今日はそこまで悪くないと手応えを感じていて、前回の戦いから修正できるポイントを修正してしっかりいい方向に表れていることもありました」

「もちろん0-3になってからも、もうだめだとあきらめることはなかったし、全員が1点でも取り返す気持ちを持っていたので最後まで戦えていたと思います」

 やるべきことをやった上での敗戦だからこそ、見えた現在地。

「今回は自分たちでも修正するところはして戦いましたけど、地力の差で負けました。いまの僕たちの力を認識できた2試合ではないかと思っています」

 勝ち点9の差は少なくないが、だからといって戦いをやめるつもりはない。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司