4月29日に唯一行われた明治安田生命J1リーグは第22節の名古屋グランパス対川崎フロンターレ。2位と首位の連戦の第1戦として大きな注目を集めたが、結果は意外にも川崎Fの圧勝だった。堅守を誇る名古屋が川崎Fを食い止める、という予想は開始3分に外れ、しかも計4ゴールを奪った川崎Fが連戦の初戦を白星で飾った。

上写真=レアンドロ・ダミアンの下に仲間が集って歓喜。この日の2ゴールでがっちりと勝利をつかんだ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月29日 明治安田生命J1リーグ第22節(@豊田ス/観衆9,693人)
名古屋 0-4 川崎F
得点:(川)旗手怜央、レアンドロ・ダミアン2、遠野大弥

「自信を持っていることは変わらない」と急きょ指揮を執ったコンカ・コーチ

 強い。

 その一言で表現できる。J1の天王山と言われた首位川崎フロンターレと2位名古屋グランパスの、2試合連続頂上決戦。名古屋がホームのその最初のゲームはしかし、最初の23分であっけないほど大差がついた。

 ここまでわずか3失点という名古屋の堅守を、川崎Fはたったの3分で破った。三笘薫がドリブルで中央に入ってゴール前のレアンドロ・ダミアンへ。ワンタッチで落とすと旗手怜央が右足で豪快にたたいてGKランゲラックを破った。10分にはこぼれ球を拾った登里享平が左に開いていた家長昭博へ。シンプルなファーへのクロスをレアンドロ・ダミアンがヘッドで流し込んで、2点目。23分には田中碧が送った右CKをニアでジョアン・シミッチがヘッド、中央に流れたところをまたもレアンドロ・ダミアンがヘッドでたたき込んで3点目。中央突破、サイド攻撃、セットプレーと、バリエーション豊富に得点を重ねた。

 名古屋はここで倒れるわけにはいかない。すかさずベンチが強い刺激を入れた。わずか30分で宮原和也に代えて成瀬竣平を、山崎凌吾に代えて長澤和輝を投入する荒治療。中盤のセンターに米本拓司と稲垣祥と長澤を置いて厚みを加え、右のマテウス、左の相馬勇紀の突破力を生かしていった。

 後半には点を取るしかない名古屋が攻める。マテウスの突破からスルーパスを受けて柿谷曜一朗が右足で狙った53分、左の相馬の突破からマテウスが左足で打った55分、相手のもたつきを見逃さずに奪って最後は稲垣祥から長澤に送ってフィニッシュに持ち込んだ61分など、よりゴールに迫るシーンは増えた。

 しかし、川崎Fは焦らずに次の展開を狙っていた。72分と77分の交代策でピッチに出ていた2人で決めきったのはさすがだ。84分に脇坂泰斗が持ち込んで左に預けると、遠野大弥が左足で強烈に右スミに突き刺して4-0として、勝利を決定づけた。

 試合当日にノドに痛みを訴えたマッシモ・フィッカデンティ監督がオンサイト検査を受け、判定保留。そのため、急きょ指揮を執ることになったブルーノ・コンカ・コーチは、この状況が影響を及ぼしたことを認めた。

「実際には、監督と連絡をつないだ状態でゲームをやっていました。試合前も試合中も相談しながらやっていましたが、その場にいるかいないかはやはり大きいので、それが試合に出てしまったのは認めざるを得ない」

 だが、この大敗にも「これまでの取り組みを変えなければいけないという位置づけではありません。自分たちに自信を持っていることは変わらないし、次の試合では強みを出せるようにやろうという声を掛け合いました」と切り替え済み。5日後の「第2ラウンド」での雪辱を誓った。

 選手に重要性を植えつけた「初戦」を圧勝で飾った川崎Fは、鬼木達監督も納得の90分。

「大事なゲームで選手たちは気持ちを出してくれました。ゼロに抑えて得点も取って、気持ちの入ったゲームでした。でも、次があるので頭は切り替えていきたい」

 メンタル面の充実を評価しながら、次戦に照準を合わせた。ただ、「プランは相手もあることなので少し考え直すところは直しますし、他のところも少し、3点リードしたからでもありますが、ボールを持たれた時間もあるので、改善するところはあると思います。人のところも含めて考えたい」と大量リードしたからこその反省点も指摘した。

 5月4日の「第2ラウンド」で名古屋の大逆襲はあるのか、それとも川崎Fが返り討ちにするのか。まだまだ目が離せない。

写真◎J.LEAGUE