8勝2分けと負けなしの名古屋グランパスで、全試合に出場しているのが相馬勇紀。ドリブルの切れ味は相変わらずの鋭さだが、それを得点に結びつけるために奮闘中だ。ゴール前に人数をかける。ていねいなラストパスを心がける。相手のミスを逃さないしたたかさを持つ。それを忘れずにゴールを目指す。

上写真=相馬勇紀は今季は第2節で初ゴール。この笑顔をもっと見たい(写真◎J.LEAGUE)

「ラストパスが1メートルずれるかどうかで」

 9試合連続無失点試合のJリーグ記録を更新している名古屋グランパスでは、一方で得点がなかなか生まれない状況にもある。10試合中、1得点は5試合、0得点は2試合だ。

 大胆なフィジカルと繊細なメンタル。相馬勇紀がいまこそ必要なのはその二つだと考えている。

「得点できる形というのは、人数をかけることだと思うんです。フィジカルの話になりますけど、ここぞというときのスプリントによる迫力がチャンスにつながると思います」

 個人ではなくチームとしてフィジカルのパワーを集中させて、一気に攻めきるシーンを作りたいという考えだ。

 そして、繊細なメンタルはフィニッシュへの決断力とていねいな技術に直結する。

「メンタルの部分というか決断力で思い切りよく足を振っていくのが大事だと思いますし、ゴール前の精度をもっと上げたいと思っています。全体としては1本のラストパスが1メートルずれるかどうかで大きく違いますし、あるいは30センチの世界で両方のコースに打てるか片方のコースにしか打てないか変わってくると思うので、そういう繊細な部分も含めてシュートの本数は上がっていくと思います」

「ミスを起こさせていると認識できる」

 ミスをきっちり仕留めていくのも、得点力を高める方策の一つだ。

「サッカーというものはそもそも、ほとんどの試合でミスを突くか突かれるかだと思っています。きれいなつなぎから取った1点も、相手のミスで取った1点も変わらないですから。ミスを逃さず仕留めきれる力の方が大切だと思っていますし、そこの差が優勝できるかどうかにかかってくると思います」

 それに、ミスはこちらの主導で作り出している、という意識がある。

「いまチームでやっていることは正しいと思っているし、ミスが起きているところを仕留める、ではなくて、ミスを起こさせていると認識できると思うので、やっていることを信じてその上でさらにクオリティーを上げていきたいと思っています。もちろん、ポゼッションでつくりながら取らないということでもないですし、そこに目を向けないわけではないけど、ミスを突くのはサッカーにおいて大切なことだと思います」

 まさにその「ミスの突き合い」は、次節のサガン鳥栖とのゲームで重要なファクターになるだろう。鳥栖も激しくアグレッシブに戦い、ミスを許してくれない。

「堅いチームなので、1点を取り合う戦いになると思います。相手は3バックだと思うので、ウイングの上下動によって3センターバックの脇のスペースが空いてきて、そのポジションのミスマッチのズレをこちらが有効に使いたいと思います」