AFCチャンピオンズリーグの日程に伴い、明治安田生命J1リーグは4月14日、変則的に第19節が行われ、川崎フロンターレがアビスパ福岡と対戦。雨の影響を強く受ける試合となり、地力に勝る川崎Fが最終的に勝利を手にしたが、福岡のタイトな守備も光って最後まで緊迫した展開だった。

上写真=福岡のフアンマ・デルガドと川崎Fの選手たちがエアバトル。雨の中、ともに一歩も引かない緊迫のゲームに(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月14日 明治安田生命J1リーグ第19節(@等々力/観衆6,958人)
川崎F 3-1 福岡
得点:(川)遠野大弥、知念慶、山根視来
   (福)エミル・サロモンソン

前半終了間際に福岡が追いつく

 これも一つの「フロンターレらしさ」かもしれない。前節から中2日の試合ということもあって、メンバーを入れ替えながら臨んだアビスパ福岡戦。相手の自慢のタイトな守備に苦しみながらも、終わってみれば3-1で突き放したのはさすがだった。

 霧雨から本降りになる悪コンディションの中でも、優勢に試合を進めたのはやはり首位の川崎Fの方。19分には右CKのこぼれ球を遠野大弥がミドルシュート、これがフアンマ・デルガドの頭に当たってコースが変わり、ゴールに飛び込んだ。昨季アビスパ福岡で活躍して今季川崎Fに戻ってきた遠野の「恩返し弾」で先制した。

 ところが、ここからゴールに迫りきれないもどかしい展開が続いた。ポジショニングのバランスが整わず、距離感がいつもよりも遠くなる。福岡の激しいコンタクトと雨の影響で攻撃がぶつ切りとなる。

 するとアディショナルタイムに、福岡に千載一遇のチャンスが訪れた。カウンターから渡大生が抜け出したところでファウルを受けてFK。ゴールまでおよそ25メートル。ここでセットプレーが得意中の得意のエミル・サロモンソンが、伝家の宝刀を抜くように右足を一閃、ボールはきれいにゴール左に飛び込んだ。このまま前半が終了という絶好のタイミングでの同点弾になった。

 ここで雨がさらに強まるとともに落雷の危険性があるため、ハーフタイムが20分程度延長され、20時26分に後半がキックオフされる事態になった。

「いい時間を過ごせた」と長谷部監督

 長いハーフタイムを経て、川崎Fがシンプルな攻撃で押し込み始める。サイドに入ってからの崩しを前半より簡素化してボールを中央の危険なゾーンにどんどん送り込む。それが後半開始わずか10分で実った。

 右サイドに抜け出した山根視来がGKとDFの間の際どいコースにクロス、GKがパンチングしたこぼれ球を遠野がシュート、ゴール前にいた知念慶が左足でコースを変えて押し込んだ。知念の今季初ゴールで勝ち越した。

 ここからの戦いも川崎Fらしさが詰まっていた。1点を追いかける相手の勢いをうまくパスで削いでおいて、カウンター。さらには、家長昭博、三笘薫、ジェジエウ、レアンドロ・ダミアンと、現状のレギュラークラスを次々に投入して試合をきっちりと締める交代策。

「守るべきところはしっかりとやらせないようにしながら、3点目を取りにいきたいと思っていました。結果論になりますが、選手はいい対応してくれて、新たな勝ち方ができました。いい締め方をしてくれました」

 鬼木達監督が実感を込めて話す。川崎Fがまた一つ、勝ち切るバリエーションを手に入れた。

 福岡は長谷部茂利監督が「スキはありませんでした。簡単には得点できませんでした」と正直に力の差を認めた。しかし、「選手たちは持っている力、やろうとしていることを存分に発揮していい時間を過ごせたと思います。この時間をつなげていかなければいけないなと思いました」と、こちらもJ最高のチームとの対戦で大切なものを得たようだ。

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE