上写真=FC東京との「多摩川クラシコ」は4-2で勝利。お互いに攻め合う思想をぶつけ合い、また一つ、勝利を積み上げた(写真◎J.LEAGUE)
「最後のところだけをていねいにやればいいわけではない」
普段の練習で選手の姿を見て、「面白いんですよ」「楽しいですね」とニコニコとうなずきながらその様子を話す監督を、あまり見たことがない。
鬼木達監督は、そういう監督だ。
誰もが強いと認める川崎フロンターレに対し、どのチームも最大限の対策を施して挑んでくる。しかし、それをことごとく破ってきた。その結果が、9勝1分けで首位。でも、10試合のうち、「1試合3ゴール以上」の目標をクリアしたのが半分以下の4試合ということもあってか、まだまだ、という気持ちがある。
「昨年から積み上がっていないとは思ってはいないですけれど、ただ、ちょっとした精度のところで得点にならない場面は多々あるんです。最後のところだけをていねいにやればいいわけではなくて、そこに行き着くのに大事な場面もあるわけです。最後の最後でずれてしまうのは、それまでの過程が大事なのであって、だからまだまだやらなければいけないこと、やるべきことは多いなと思いながらやっています」
フィニッシュそのものの質を追求するのはもちろん、フィニッシュの前のパスが、さらにその前のパスが、あるいはその前のボールの奪い方が正しかったのかどうか、などの「つながり」を大切にしている。
毎日のトレーニングで、その過程にていねいに前向きに向き合う選手を見て、この言葉。
「そういうのも含めて楽しいんですけどね。選手たちを見ていて、昨日よりも今日、と成長が感じられるので、選手たちは本当にいい取り組みをしてくれていると思います」
多摩川クラシコは「真っ向勝負でぶつかり合える」
4月11日、FC東京との「多摩川クラシコ」は4-2の勝利で、打ち合いのゲームになった。
敵将の長谷川健太監督が試合前日に面白いことを言っていて、いわく「静岡ダービー、大阪ダービーを経験してきましたが、負けが許されない、というダービーマッチとは違って、多摩川クラシコは勝利を目指してやることが多いと思います。どちらかといえば、両チームとも勝つためにやるのがこの対戦です」。なるほど、それだけ指揮官にとっても魅力的なゲームだと言えそうだ。
鬼木監督もその思いは同じ。
「自分たちもそうですし東京もそうですが、真っ向勝負でぶつかり合えるというゲームですね。いまの自分たちの現在地、いいものや足りないものが分かる場所だと思っています。今回は勝てましたけど、ものさしになるゲームです。自分たちも自分たちの良さで戦って、相手の良さを消すことができればいいと思っていました」
Jリーグのすべての試合が、攻め合ってゴールを取り合うスリリングな展開になるはずはない。だからこそ、両者とも攻撃へのまっすぐな思想をぶつけ合って戦えることの幸せを再びかみ締めることができたのは確かだ。
「Jリーグ全体を考えるのであれば、やっぱりどのチームもアグレッシブに得点を取りにいくのは見ていて面白いだろうと思います。もちろん、それぞれのチームで特徴があるのでそれだけではありませんが、ぶつかり合うサッカーはプロの世界ではなくても面白いと思うので、そこは単純にそういう思いがありますね」
中2日で迎えるのはアビスパ福岡戦。FC東京と同じように堅守が自慢だ。再び「面白い」試合がしたい。
「多摩川クラシコの勝利のあとが大事になります。クラシコに気持ちを持っていったこともありますが、それ以上のものを持っていかないといけないですし、(福岡は)前節は10人でも引き分けに持っていっていますから、自分たちらしさを出さないと勝てないと思います。東京戦の3も福岡戦の3も勝ち点は変わらないですから、同じ重みがある3を取りにいきたいと思います」