4月11日の明治安田生命J1リーグ第9節で行われた「多摩川クラシコ」。これが37回目となるが、制したのは川崎フロンターレだった。4-2でFC東京を退けたのだが、優位に試合を進めることになったのは、序盤に2点をリードしたから。その両方を決めたのが家長昭博だった。貫録の2ゴールだったが、だからこそ守備の反省もあぶり出した。

上写真=17分には早くもこの日2点目を奪って、家長昭博はこの笑顔。今季早くも5ゴール目だ(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月11日 明治安田生命J1リーグ第9節(@味スタ/観衆17,615人)
FC東京 2-4 川崎F
得点:(F)アダイウトン、内田宅哉
   (川)家長昭博2、三笘薫、レアンドロ・ダミアン

「僕と視来だけの問題ではないけれど」

 あっという間の2ゴールで、多摩川クラシコの18度目の勝利に向けて、圧倒的優位に立つことができた。決めたのは、家長昭博。

 FC東京の長谷川健太監督も、川崎フロンターレの鬼木達監督も「先制点が大事」と強調していたその最初のゴールを川崎Fが決めたのは、わずか8分のこと。FC東京のパスミスを拾ったジョアン・シミッチが前のレアンドロ・ダミアンにつけ、DFの裏に浮き球のパスを送ったところに、右から家長が入ってきた。ダッシュしてきたそのコースにぴたりと合ったボールが届き、力強くヘディングシュート。ゴール左に突き刺してみせた。

 17分の追加点は、家長らしさにあふれていた。レアンドロ・ダミアンからのパスを、ワンタッチで左足でカーブをかけるように、ややループ気味にゴール左に送り込んだ。センスあふれるショットだ。

 試合はこのあと、59分にFC東京がアダイウトンのゴールで1-2として勢いを増したと思われたそのたった2分後に、川崎Fは三笘薫が決めて「火消し」。75分にレアンドロ・ダミアンが決めて、川崎Fがダメを押した。しかし、家長にとっての大きな反省はこのあとにやってくる。

 84分、FC東京の左センターバック、森重真人が左サイドに浮き球のパスを届けた。川崎Fから見ると、ちょうど右サイドバックの山根視来と右のワイドの家長の間に落としてきたボールだった。受けたアダイウトンを家長が追走するが振り切られ、山根が対応すると高萩洋次郎につながれ、逆サイドへのクロスを内田宅哉に決められたのだ。

「僕と視来のところでアダイウトンに仕掛けられて苦労したので、どうしたらよかったのかと試合が終わって話しました。僕と視来だけの問題ではないけれど、失点してしまったので反省して次に進めたいと思います」

 今季は早くも5ゴール。これまでJ1では2016年の大宮アルディージャ時代と昨年に記録した11ゴールがシーズンのハイスコアだが、今季のペースはその2シーズンを上回る。まだ10試合を消化した時点だから気は早いかもしれないが、フィールドプレーヤーで最年長となった年がキャリアハイを塗り替えるシーズンになるかもしれない。

「最年長で引っ張っていかなきゃいかなきゃ、と思いながらやってたんですけど、年下が引っ張ってくれるので、ついていこうかなと切り替えています」

 そのちょうどいい力の抜け具合が、ゴールを生む源になっているのかもしれない。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE