4月11日の明治安田生命J1リーグ第9節。FC東京は川崎フロンターレとの「多摩川クラシコ」に2-4で敗れたが、明るい話題もあった。内田宅哉のJ1初ゴールだ。84分に2点差に迫るヘッドでの一発となった。慣れないポジションで結果を残したこの日の思いを、次につなげていく。

上写真=内田宅哉のJ1初ゴールが生まれた。まだ2点差だっただけに喜びは控えめだったが、次は勝利へのゴールを決めたい(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月11日 明治安田生命J1リーグ第9節(@味スタ/観衆17,615人)
FC東京 2-4 川崎F
得点:(F)アダイウトン、内田宅哉
   (川)家長昭博2、三笘薫、レアンドロ・ダミアン

「どうしたら入るんだろう」という悩み

 アダイウトンが左サイドからスピードと迫力のあるドリブルで中に向かってくる。高萩洋次郎に預けたその瞬間、逆サイドから右手を高々と挙げてゴール前に入ってくる男がいた。内田宅哉だ。

 この渾身のアピールが高萩の視界に入った。さらに手前に入ってきたディエゴ・オリヴェイラにマークが引っ張られて、内田はフリーだった。高萩が選択したのは、その内田への絶好のクロス。

「ボールが左にあるときには右のサイドは空いていて、抜けてきたらチャンスがあると考えていたので、いいボールが来てよかったです」

 1-4で劣勢だった84分のシーン。その「いいボール」を内田はヘッドでピッチにたたきつけると、ボールは勢いを増してゴールに飛び込んだ。ついに、J1初ゴールだ。

「たたきつけるというよりは、逆サイドネットを狙いにいきました。でも、そういう感じになって。正直、たたきつけたわけではなかったです」

 結果が良ければ、問題ない。

 内田はJ1ではそれまでの計3試合から、昨季は一気に出番を増やして25試合に出場。今年は選手会長にもなって期するものがあった。しかし、今季は4試合に交代出場していたもののシュートはなし。ゴールへの意欲がなかなかピッチで表現できていなかった。

 この日はチームは4-4-2のフォーメーションでスタートしながら、64分に高萩と田川亨介と内田がピッチに入ったタイミングで3-5-2にシフト。内田は「右のウイングバックに行けと言われました」。本来は2列目の攻撃的な選手で、いつもとは違うポジション。

「前半の早い段階から失点していて、球際や1対1で負けている部分が多かったので、入ったらやってやろうと思っていました。いつもと違うポジションですけど、前からウイングバックやサイドバックで準備しておけと言われていて、それが今日来て、ああいう形で結果に残せてよかったです」

 4-3-3ではインサイドハーフもワイドもやるし、4-4-2ではサイドハーフだけではなくセントラルMFに入ることもあった。そして今回はウイングバック。オールラウンドな能力に磨きがかかった。

「去年から多くの試合に出させてもらっている中で、ゴールという結果に結びつかなくて、どうしたら入るんだろうと考えていました。こういった形でやっとゴールを取ることができてすごく安心したし、でも満足せずにどんどん結果を残せていけたらいいと思っています」

 一瞬の安堵はあったものの、惜しまれるのは、試合には勝てなかったことだ。

「得点はできたけれど、勝たないと意味がありません。勝つための得点やアシストをもっともっと決めていきたいと思っています」

 次は、自分で決めてチームを勝たせてみせる。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE