川崎フロンターレとFC東京の「多摩川クラシコ」は、4月11日の明治安田生命J1リーグ第9節で通算37回目を迎える。首位を走る川崎Fにとっては、追いすがろうと立ち向かってくる6位のFC東京をしっかりたたいておきたい。とはいえ、鬼木達監督の視線は常に自分たちに向く。FC東京の良さを止めるには、自分たちらしさを出すだけだ。

上写真=鬼木達監督は多摩川クラシコへも自分たちのサッカーをするだけと見据える(写真◎J.LEAGUE)

キーワードは「強気」

〈アンカーの脇は空く。狙え〉が攻撃側の定石であるとするならば、守る側のそれとは?

 最終ラインの前にアンカーを置く戦い方を採用する場合、その左右にスペースが生まれがちだ。そこをどう使って攻めるか、あるいはどうブロックして守るかは、このフォーメーションを選択するチームの試合では注目ポイントの一つになる。

 守る側とすれば、一般的にそのスペースを使われないようにどう埋めるかに意識が傾きがちだが、川崎フロンターレの鬼木達監督は自分たちのアプローチをこんな風に説明する。

「選手たちは(スペースが空くことは)理解しながらやっているんです。どう強気で戦えるかという考えでやっていると思ってもらっていいと思います」

 キーワードは「強気」のようだ。

「自分たちは自分たちの分析もしている」

 J1第8節で戦ったサガン鳥栖は前半、2列目に樋口雄太と仙頭啓矢を置き、島川敏郎の負傷交代により25分からは中野嘉大が樋口の位置に入った。ちょうど、アンカーのジョアン・シミッチの左右に入るようなベースのポジション取りだった。しかし、川崎Fの選手たちは、ほったらかしと言えば言葉は悪いが、特別にマークをつけるようなことはしなかった。前線から厳しくボール狩りを繰り返しては、そこにパスが入らないように対処しているようだった。

「チームの戦い方にかかわるところなのであまり言えないですけど、言ってしまえば、そういうことだと思います」

 明言はしなかったものの否定もせず、戦い方の一つとしては当たらずしも遠からず、というニュアンスだろうか。

「ほかのチームについてもそうですが、分析はしています。でも、自分たちは自分たちの分析もしているので、相手がどこを狙いやすいのか、どうすれば使われないかも含めてやっています。そこを理解した上で、チームとしてはみんなで分かっていることです」

 自分たちの弱点を見極めることで、それを隠そうとする消極的な方法とは別のやり方で消していく。それが「強気」の一つの表れだろう。

「自分たちらしさを貫けるかというところです。当然、時間帯や選手の立ち位置で少し弱気になったりとほころびが出てきたりするので、そうなったときには形を変えたりケアしたり、このエリアでこうなったときにはこうしよう、というものは持っているので、できる限り強気でやるということです」

「最後に相手が狙ってくるのは」

 それを改めて表現するのが、4月11日、FC東京との多摩川クラシコだ。ただ、相手がどこであっても自分たち次第というのが鬼木流。

「そうはいっても自分たちのところになるのかな、と思います。突き詰めないとFC東京と戦うときには持っていかれると思うので、ベースのところ、球際、強度で負けないところと、東京らしさを出させないことが大事です。自分たちらしさを出すことがそこにつながると思うので、変わらずにやっていきたいですね」

 多摩川クラシコはここ5試合、負けていない。ただ、昨年のJリーグYBCルヴァンカップ準決勝では0-2で敗れている。

「今回はちょっと予想がつけづらいかなと思っていて、ただ、最後に相手が狙ってくるのはこういうところなんだろうなというイメージはあります。そこを消す、というより出させないために、どちらにとっても先制点が大事になってくると思うので、そこに向けてお互いに取り組んでいくのかなと漠然と思っています。相手は個の力があるので、そこは気をつけながらやりたいと思います」

 強気を貫いて、また一つ、勝利を重ねるつもりだ。