昨シーズンの最終節で負傷した登里享平は、3日の大分トリニータ戦で今シーズン初出場を果たした。左サイドバックとして先発すると、90分間、躍動感あるプレーを披露。フロンターレの色をつなぐ者としての存在感も示した。

上写真=大分戦で今季初出場を果たした登里享平(写真◎J.LEAGUE)

■2021年4月3日 明治安田生命J1リーグ第7節(@等々力陸/観衆9,810人)
川崎F 2-0 大分
得点:(川)三笘薫2

緊張感と危機感がある中で臨んだ

 相手を見て、状況を把握する。それが川崎Fの選手たちが共有するプレーの前提だ。負傷から復帰し、大分戦で今季初出場を果たした左サイドバックの登里も、その状況把握力を示した。

「久しぶりの試合ということで、立ち上がりにしっかり入ろうという緊張感もありました。その中で大分の5-4-1に対して、どう組み立てていけばよいかなという、頭の中でイメージしていましたが、攻略するまでに少し時間がかかりました」

 本人は反省を口にしたが、同サイドの三笘薫をフォローしつつ、幅を取り、攻撃に厚みを加えた。チームの先制点も、登里がきっかけをつくった。

 三笘とのワンツーでボックス左横に進入すると、相手のサイドハーフ、井上健太に倒されて直接FKを得た。脇坂泰斗の低い弾道のキックは相手守備者にはね返されたが、こぼれ球を三笘が蹴り込み、ゴールが決まった。

「自分の特長だったり、生かされる側にもなりつつというのは課題だったので、よりパワーを持って自分から仕掛けていくことは意識していました。(得点のきっかけになった)ああいうランニングは続けていきたい。無失点はよかったですけど、もう1点2点取れるように、もっとチームでコミュニケーションをとりながらどんどんやっていきたいと思います」

 後半にも三笘が決めて川崎Fは2-0で勝利を飾った。しかし登里はもっと点が取れたと反省。復帰戦で勝利を収めだけでは満足せず、チームとしての向上を口にするのは、「(中村)憲剛さんからもらったバトンはこれから若い選手にも受け継いでいって、フロンターレの色はつないでいければ」と語る登里らしい。

 欠場中には旗手怜央が左サイドバックに定着し、印象的な活躍を披露。登里は危機感を隠さず、「数字にもこだわる」と復帰前の取材で語っていた。

「相手の5-4-1のブロックに対して、もう少し相手の出方を見て、三笘選手や旗手選手なんかに数的優位をつくりながら、前に進めればよかったなと。自分のところに4枚のサイドが出てくるというところで、もう少し引き出したり、そういう駆け引きをやりながら、相手の出方を見ながら、もっと早くできればよかった」

 この試合で出た課題を克服して、次戦へ生かしていく。鬼木達監督も「前半よりも後半にどんどん良くなった。ノボリらしいプレーもありましたし、久しぶりのゲームで緊張と不安はあったと思いますが、時間とともに積極性も出てきました。球際やスライドで良い感覚をつかみながらやってくれた。こういう試合で勝てたことで、ポジティブだと思います」と今後のプレーに期待を寄せた。

「自分も久しぶりに帰ってきて、すごく緊張感がありましたし、すごく危機感もあった中で試合をやりましたけど、良い雰囲気で迎えてくれて心強かった。サッカーもそうだし、やっぱり等々力は最高だなというのは改めて感じました」と登里。常に高みを目指すがゆえに、リスタートは手放しで喜べる内容ではなかったのかもしれない。ただ、等々力に集ったファン・サポーターは何とも頼もしい選手が戻ってきたと感じたのではないだろうか。試合後、登里に注がれた拍手の大きさが、そのことを証明していた。