上写真=前田大然が攻め、谷晃生が守る。どちらも持ち味を出した90分はドローに終わった(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月3日 明治安田生命J1リーグ第7節(@日産ス/観衆:9,152人)
横浜FM 1-1 湘南
得点:(横)エウベル
(湘)山田直輝
湘南は「いい守備のためのいい攻撃、いい攻撃のためのいい守備」
最初のビッグチャンスはアウェーチームが迎えた。キックオフからしばらく前への勢いを保った湘南ベルマーレがゴールを脅かすと、12分にCKを獲得。右から高橋諒が蹴ったボールを町野修斗がファーでヘディングで狙い、これを山田直輝がヘッドでコースを変えるが、横浜FMの前田大然にゴールラインぎりぎりでクリアされた。
横浜FMはスロースタートとなったものの、最初のピンチをしのいでからようやく体が温まったか、ボールを動かして主導権を握った。特に岩田智輝と仲川輝人の右サイドがチャンスを生んで、36分、右外の仲川に預けた岩田が折り返しをもらってから左足を振り抜く強烈なミドルシュート、45+4分には岩田のパスで仲川が右サイド深くに潜り込むと、折り返しをエウベルがヘッドで狙い、DFに当たったこぼれ球を再び仲川が中央に入れるとオナイウ阿道がダイレクトでシュートを放った。しかし、前者は左ポストに、後者はバーに直撃してゴールには至らなかった。
後半も出足の遅い横浜FMを尻目に湘南が押し込み、いきなり48分に町野がゴールを急襲するなど、立ち上がりに仕掛けた。またもこれで目を覚ましたか、横浜FMは56分にエウベルの左CKからチアゴ・マルチンスがヘディングシュート、しかしこれもまた左ポストに防がれてしまう。
ツキに見放されたかと思ったが、スーパーゴールでやっと帳消しだ。65分、天野純の左寄りからの高速クロスを前田がていねいに落とし、ボールの落ち際をエウベルが右足で叩くボレーシュート。これがきれいにゴール右に吸い込まれて来日初ゴール、ついに横浜FMが先制した。
ところが、リードは10分しか続かなかった。湘南はこぼれ球を拾った古林将太が右からピンポイントクロス、町野の頭を越した向こう側に入ってきた山田がジャンピングヘッドで叩き込んで同点に追いついたのだ。
このあと、スコアは動かず1-1のドロー。横浜FMとしては3度の「ゴールマウスブロック」を嘆くほかなかった。アンジェ・ポステコグルー監督は「手も足も出ないなら仕方がないが、あれだけチャンスを作って1ゴールで、どうしたら満足できるのか」と嘆き節。「チャンスをたくさん作った中で、ゴール前のエリアでシャープさを失って決定力がなくなった」と肩を落とした。
勝ち点1ではあるものの、アウェーでの引き分け、そしてルヴァンカップの勝利を含めて3戦負けなしと持ち直してきた湘南の浮嶋敏監督は、まずは一安心の表情。
「後半は説明しようがない素晴らしいミドルシュートが入ってしまって、でも自分たちのフォームを崩さない結果で追いつけました。全般でいうと悪くない勝ち点1だったのではないかと思います」
その要因にしっかりとした守備を挙げる。
「攻守にバランスが取れて、いい守備のためのいい攻撃、いい攻撃のためのいい守備ができたと思います」
「勝てる試合だった」とポステコグルー監督が表現した横浜FMと、狙いをきっちり遂行して「悪くない勝ち点1」と浮嶋監督が振り返った湘南。同じ結果だが、見える景色は正反対だった。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE