川崎フロンターレは日本代表に山根視来を、U-24日本代表に田中碧、三笘薫、旗手怜央の計4人を送り込んだ。鬼木達監督はこの事実を喜び、その経験を還元することを願っている。連勝ストップへの思いとともにオンライン取材で語ったこと。

上写真=鬼木達監督は多くの選手が代表に選出されたことを誇りに感じている(写真◎Getty Images)

「自分たちからボールを渡してしまった」

 3月18日に山根視来が日本代表に初選出され、19日に発表されたU-24日本代表には田中碧、三笘薫、旗手怜央がメンバーに入った。今回のこの二つの日本代表に1クラブから招集された人数は、4人の川崎フロンターレが最多だ。さすが、J1王者の面目躍如だろう。

 鬼木達監督は「うれしく思いますね。そういうところをすべての選手が目指してやって来ているので」と、選手の意識の高さを強調する。日本代表は永遠のライバル、韓国とのテストマッチとワールドカップ2次予選のモンゴル戦、U-24日本代表は強豪のU-24アルゼンチン代表と2試合戦う。どちらも骨太の戦いが待っている。

「まずは、いま持っている力をしっかり出すことですね。そして、やってきたことを自分の力に変えられるかが結局、一番大事だと思うので、体験しただけでは意味がないと思うんです。経験を生かすことが大事ですので、全力で取り組んで得るものを多く持って帰ってきてほしいと思います」

 4人のリアルな経験は、川崎Fのさらなるチーム力アップに生きるはずだ。同じことを日本代表の森保一監督もこう話している。

「代表活動を通して刺激を持ってもらい、短期間で成長してもらってチームに帰ったときに、代表での経験を持ち帰ってレベルアップにつなげてほしいと思います。そして、代表選手が戻ったチームの全員がまた刺激を受けて活性化して、Jリーグの試合が全体的に代表経験を通して盛り上がることを期待して招集しています」

 そのJリーグで言うと、川崎Fの開幕からの連勝は5で止まってしまった。3月17日の第5節でヴィッセル神戸にアウェーで1-1だった。1-0で迎えたアディショナルタイム、通算で実に90+10分に追いつかれた。負けたわけではないが、勝利にこそこだわる鬼木監督と選手たちの、まるで負けたかのように悔しがる表情が印象的だった。

「選手がというよりは、自分自身ももう一度再確認できたのでポジティブにとらえて、次のゲームを迎えることができます」

 鬼木監督の言う「ポジティブな再確認」とは、どういうことだろう。

「アディショナルタイムが長かったことではなくて、そこに至るまでの得点機会で2点目、3点目を取れるチャンスに取れなかったことが一つ。二つ目は、アディショナルタイムにあの時間からやるべきことやらなければいけないことが少しぼやけてしまったなと」

「そこは自分たちのチームには難しいところがあります。選手にも話しましたが、自分たちは最後の最後まで魅せたいというところと勝たなければいけないというバランスのところで、今回のような状態でも攻めて点を取って勝ちきることもあれば、失点したこともありました。それは試合の状況次第であって、本当にチャンスであれば攻めにいってもいいけれど、チャンスになるかどうかな、というところで、しかもアウェーだったので考えなければいけないところでした」

「アディショナルタイムに行ったり来たりになってしまって、その時点で自分たちの時間の進め方にシフトチェンジしなければいけませんでした。相手はボールを取ることにエネルギーを使うのを嫌がったはずなのに、自分たちからボールを渡してしまったんです。点を取って決められればそれも成功だし、時間を進めて勝ちきるのも成功なので、そこは全員で共有したいと思います」

 川崎Fほどのチームでも、その判断にフォーカスが合いきらないことがあるのだ。その事実から学ぶ振る舞いこそが、まさに「再確認」の中身なのだろう。