浦和レッズはJ1第5節で北海道コンサドーレ札幌と対戦し、スコアレスドローを演じた。相手に押し込まれる時間は長くなったが、おれはある程度、織り込み済みだったとGK西川周作は言った。その理由とは何だったのか。

上写真=好守でクリーンシートに貢献した西川周作が声援に応える(写真◎Getty Images)

■2021年3月17日 明治安田生命J1リーグ第5節(@埼玉ス/観衆4,571人)
浦和 0-0 札幌

つなぐよりも蹴る90分

「全然ネガティブな雰囲気ではなかった」

 試合後、浦和のゴールを預かる守護神は言った。序盤から札幌の圧力の気圧されて、たびたび自陣でボールを失い、攻撃を許した。しかし、西川に焦りはなかったという。

「どちらかと言ったら、自分たちがキャンプでやってきたことをやらずに戦った90分でした。その割り切りは監督からも(指示が)ありましたし、自分たちも我慢強く、見て分かるようにつなぐよりも蹴る、セカンドボールを拾う、球際で負けないというところを意識しながらプレーをしていました」

 たとえボールを奪われても、ゴールにカギをかけて相手の攻撃をやり過ごし、ボールを取り返せばロングボールを交えて陣地を回復していく。ある種の割り切りがこの日の浦和にはあった。それは1週間ぶりの試合だった札幌と中2日でこの試合に臨む浦和とでは明らかにコンディションの差が出るとリカルド・ロドリゲス監督が判断したからでもある。リスクマネジメントの観点から選択した戦い方だった。

「つなぎたいけど、杉本(健勇)選手を起点に攻撃を始めるという割り切りができていた」

 前半、札幌は5本のシュートを放ち、浦和は2本に留まった。だが、スコアはともに0点。そして後半も札幌の6本に対し、浦和は4本。試合全体を通して優勢だったのは札幌だったが、スコアは結局、0-0だった。48分、ルーカス・フェルナンデスのクロスに飛び込んだ田中駿汰の至近距離からのヘッドを左足一本で防ぎ、57分のボックスすぐ外からの駒井善成のシュートにも鋭く反応。86分に金子拓郎のクロスから放たれた深井一希のヘッドは正面でしっかりキャッチした。浦和は守備に回れば4バックにサイドハーフ一人を加えた5バックで守り、札幌の攻撃を跳ね返したが、ゴール前で安定感抜群の守りを披露した西川の存在も大きかった。

 リカルド・ロドリゲス新監督が本来、目指すのは相手を見つつ的確な立ち位置でゲームをコントロールし、安定したビルドアップから攻め落とすサッカーだ。ただ、徳島でも見せていたように、状況に応じてリアルな戦い方を迷わず選択する指揮官でもある。監督の狙いを、この日、浦和の選手たちは実践してみせた。

「長いシーズンを戦う上でこういう戦い方も非常に大事。良い意味できっかけをつくれたかなと思います」

 試合後の西川の弁だ。キャンプから積み上げてきたスタイルを捨てたわけではない。この日に限っては、つなぐより蹴るを選択したということ。そもそも理想とするのは勝利を手にすることであり、勝ち点を得ることだ。この日の戦いぶりに、そして西川の言葉に、今季の浦和の姿勢が表れていた。