2021年3月13日、明治安田生命J1リーグ第4節が開催された。等々力陸上競技場では、川崎フロンターレと柏レイソルが対戦。前半は柏の堅守を崩せなかった川崎Fだったが、後半登場の三笘薫の突破から家長昭博が決めて貫禄の5連勝を飾った。

上写真=決勝点を挙げた家長昭博をアシストした三笘薫(左)が祝福(写真◎J.LEAGUE)

■2021年3月13日 明治安田生命J1リーグ第4節(@等々力陸/観衆4,744人)
川崎F 1-0 柏
得点:(川)家長昭博

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、山村和也、車屋紳太郎、旗手怜央、MFジョアン・シミッチ(46分:塚川孝輝)、田中碧、脇坂泰斗(46分:橘田健人)、FW家長昭博、小林悠(64分:レアンドロ・ダミアン)、長谷川竜也(46分:三笘薫)

・柏メンバー:GKキム・スンギュ、DF高橋峻希、上島拓巳、染谷悠太、三丸拡、MFヒシャルジソン、椎橋慧也(86分:大谷秀和)、クリスティアーノ(84分:イッペイ・シノヅカ)、江坂任、仲間隼斗(84分:鵜木郁哉)、FW呉屋大翔(70分:細谷真大)

 前半45分は王者らしさを封じられる時間になった。川崎Fは柏のロングボールに手を焼き、ボール狩りがままならず、フィニッシュに至る形もつくれなかった。前半のゲームプランの達成度で言えば、「良い守備からカウンターというプランを持って臨んだ」とネルシーニョ監督が振り返った柏の方が上だっただろう。

 だが、後半開始から川崎Fは3人を交代させ、プレーの修正を図った。50分に三笘が左サイドを破ってボックス内に進入。最後は攻め上がっていた旗手につないで決定機を生み出す。柏のGKキム・スンギュにシュートをストップされたが、ようやく川崎Fらしい攻撃が見られた。59分にも三笘が中央をドリブルで攻め上がり、右の小林に展開。再びボックス付近まで、攻め上がってきた旗手がシュートを放ったが、これまたキム・スンギュに止められた。

 ただ、明らかに川崎Fの攻撃にリズムが出始め、テンポも上がった。三笘が攻撃陣を刺激し、それに周りも呼応した。とりわけ左サイドバックの旗手がゴール前に進出する回数が増え、攻撃の厚みが増した。64分には前半から守備に奔走していた小林に代わってL・ダミアンを投入。攻撃のギアをもう一段、上げにかかった。

 そして80分、個の力を見せつけてついにゴールをこじ開ける。左サイドでボールを受けた三笘が高橋と正対する状態から左にかわして一気に加速。ドリブルでボックス内に進入すると、相手守備陣を十分に引き付け、得意の右足アウトサイドでマイナスのパスを供給した。ゴール正面で待っていた家長だ。ワンバウンドしたボールを冷静に左足でとらえてネットを揺らした。

 柏も組織立った守備と素早い切り替え、最後まで切れない集中力で川崎Fを手こずらせたが、勝ち点を奪うまでには至らなかった。ネルシーニョ監督は「拮抗した内容の試合だったと思います。首位を走るチームに対して、良い守備から再三カウンターに出て行くシーンを前半は作れていた。だが、ラストパスやフィニッシュの精度を欠いた。相手は層が厚く個々のクオリティーが高いので失点シーンではやれてしまった」と試合を振り返った。

 一方、最後に勝ち切った川崎Fの鬼木達監督は「前後半通して苦しいゲームでしたけども、選手が最後まで力を振り絞ってやってくれたことによって大事な勝ち点3が取れた。常にコンパクトにサッカーをしようと思っていますが、向こうがボールを取ってから一発で背後を狙われ、何度か食らっているうちに少し下がってしまった。あとは攻撃のところで自分たちからバランスを崩してセカンドボールを拾えなかったり。そのために展開的には苦しくなりました」とコメント。そして後半開始時の3人同時交代については「最初に出ていた3人が悪かったとかではなくて、攻撃とか守備のバランスが取れていなかったので、交代で勢いを出したかった」と意図を説明した。狙い通りの展開ではない中で修正を施し、流れを手繰り寄せて、きっちり勝ち点3を積み上げた。それこそが川崎Fの地力だろう。

 雨の影響により直前で試合開始時刻が30分遅れるなど、不測の事態に見舞われ、ピッチ状態も万全ではなかった。それでも機に臨み変に応じて戦い切ってしまうところが、王者の王者たるゆえん。これで開幕から5連勝。王者の行進はまだまだ続きそうだ。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE